東洋醸造

東洋醸造株式会社：酒と医薬の両輪を駆けた企業の歴史

東洋醸造株式会社は、静岡県伊豆の国市（旧田方郡大仁町）に本社を置く、かつて存在した酒造と製薬を両輪とする企業でした。その歴史は、伊豆地方で酒造業を営んでいた脇田家の酒造業に遡ります。

1920年（大正9年）、脇田信吾によって東洋醸造株式会社が設立されました。当初は合成酒の製造・研究に注力していましたが、昭和初期には秋田県から杜氏を招き入れ、清酒醸造にも着手。戦後には洋酒部門を新設し、さらにペニシリンなどの医薬品も製造販売するなど、事業を多角化させて企業規模を拡大していきました。

1949年には東京証券取引所に上場を果たし、更なる成長を遂げます。1958年には旭化成工業（現・旭化成）の資本参加を受け経営基盤を強化しましたが、1970年には狩野川への抗生物質の流出事故により、多くの魚が死滅する環境問題を引き起こし、社会的な批判を浴びる事態となりました。

その後も、1983年にはチューハイ「ハイリキ」を発売するなどヒット商品を生み出し、事業拡大を続けました。しかし、1992年1月1日、旭化成工業と合併し、東洋醸造株式会社は会社として消滅しました。

東洋醸造の事業は旭化成に継承され、工場は旭化成大仁工場となりました。しかし、清酒や酒類事業はその後、他社に譲渡されていきました。2002年には旭化成の焼酎・低アルコール事業がアサヒビールとニッカウヰスキーに、2003年には清酒・合成酒関連事業がオエノンホールディングスに譲渡されました。医薬品事業は旭化成ファーマとして分社化され、大仁医薬工場として事業を継続しています。2018年には、清酒事業は福徳長酒類に移管されました。

東洋醸造は、清酒「富久娘」「菊源氏」、合成清酒「力正宗」、焼酎「源氏」、ウイスキー「45ウイスキー」「ジュピター」、甘味果実酒「45ポートワイン」、そして大ヒット商品となったチューハイ「ハイリキ」など、数多くの商品を世に送り出しました。これらの商品は、現在でも一部が他社によって販売されているものがあります。 また、かつて東洋醸造がスポンサーを務めていたテレビ番組として『スター千一夜』『なるほど!ザ・ワールド』『ゴールデンボクシング』などがあります。

東洋醸造の酒造りの伝統は、伊豆半島唯一の酒蔵となった万大醸造が「脇田屋」銘柄の清酒を醸造することで、現在も受け継がれています。 酒造道具の一部は、伊豆の国市郷土資料館に保管されており、その歴史を後世に伝えています。東洋醸造は、その歴史と事業を通じて、日本の経済発展に貢献した企業として、記憶に留められるべきでしょう。

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