東活

東活（とうかつ）

東活は、1973年から1990年にかけて活動した日本の映画製作および配給会社です。特にピンク映画の分野で知られ、その約18年間の歴史の中で500本を超える作品を世に送り出しました。その驚異的な量産体制は、当時の日本映画界において特異な存在感を放っていました。

会社の設立は、業界紙「毎日レポート」の発行人であった八木脩によって主導されました。彼は文献によってオーナー代表、あるいは社長と記されています。東活設立に先立つ前年には、「東活プロダクション」という名義で、松竹の配給による一般向け映画作品、『鏡の中の野心』や『罠にはまった男』を製作するなど、既に映画製作に関与していました。

東活として本格的に活動を開始してからは、小林悟を主軸監督に据え、自社製作に加え、東都映画、和光映画、田園プロ、ゴールド・プロといった他社の作品の配給も手掛けました。「東活」という社名については、先行してポルノ映画を手掛けていた東映や日活を意識した命名という説や、1931年創業の「東活映画社」に由来するという説が存在します。

設立当初から、東活は月に約3本というハイペースで新作映画を配給しました。これらの作品は主に松竹系の映画館で封切られ、その背後に松竹が存在することは明らかでした。しかし、松竹自体が表立って関与することはなく、配給業務は松竹第一興行が代行していました。フィルムの管理や経理といった本社機能も松竹社内に置かれていたとされますが、東活が独立した企業体だったのか、それとも松竹グループの一部門として機能していたのかは、現在も明確ではありません。本社機能の所在地については、新橋の東洋海事ビル隣接地であったとする証言も残されています。

当時の松竹は、『男はつらいよ』シリーズを除く他の作品で観客動員に苦戦しており、特に二番館などの系統館における観客離れを防ぎ、興行網を維持することが東活設立の隠された目的だったと推測されています。松竹がピンク映画事業への関与を公にしなかったのは、『男はつらいよ』シリーズが築いた健全なイメージや世間体を保つためと考えられています。加えて、代表の八木氏が総会屋出身という特殊な経歴を持っていたことも、松竹が距離を置いた一因とされることがあります。

東活の製作体制は、特に1970年代半ばから1980年代初頭にかけて、小林悟監督がほぼ全ての作品を手掛けるというものでした。彼は一人で複数の名義を使い分け、年間を通じて3本立ての作品全てを監督するという超人的な仕事をこなしていました。監督や俳優への報酬は比較的良かったとされ、松竹および松竹第一興行が作品を買い取る際に、3本まとめて1000万円という金額が支払われたという話もあります。

当時の東活作品の特徴としては、「アップの東活」と呼ばれるように、オーナーである八木氏の指示で女優の喘ぎ顔のクローズアップが多用された点が挙げられます。このスタイルは、後のアダルトビデオにも通じるものがあったと言われます。1970年代から80年代にかけてのピンク映画界は、高橋伴明や滝田洋二郎といった後に一般映画でも活躍する監督を輩出し、批評家からの注目度も高まっていましたが、東活はそうした流れとは一線を画していました。ひたすら小林悟一人が量産を続け、ルーティンワークを徹底するその姿勢は、当時の評論やファンの間では必ずしも評価が高くありませんでした。「だらだらと流されるセックスシーン」「素人同然の女優ばかり」「質の低さ」といった厳しい評価も存在します。

しかし、資金的に安定して以降は、これもオーナーの指示により、単なる性描写に留まらないドラマ性を作品に盛り込む試みが行われました。こうした質的な変化は、後年の文献において一定の評価を受けています。また、撮影所を持たず、経費削減のためにマンションの一室を撮影場所として確保し、置物などを作品ごとに角度を変えて使い回すといったエピソードも、当時の関係者によって語られています。

東活の活動は、1990年に代表の八木脩氏が77歳で死去したことを機に終焉を迎えます。翌1991年1月に3本の新作を公開した後、東活は忽然とその姿を消しました。この abrupt な終焉は、八木氏の死が直接の原因であったと伝えられています。松竹が保管していたとされる東活作品のフィルムについても、『鏡の中の野心』を除いて現存しないとされており、社内で破棄されたという説が有力視されています。

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