東濃鉄道キハ10形気動車

東濃鉄道キハ10形気動車

東濃鉄道キハ10形気動車は、かつて駄知線や笠原線で運行されていた特異なガソリンカーです。この車両は1931年に導入され、その設計は日本車輌製です。長さ10,084mm、幅2,640mm、高さ3,455mmという特徴的な寸法を持ち、自重は9.5トンです。定員は50名、座席数は24名という仕様も特筆に値します。

車両の特性

この気動車は半鋼製の車体を持ち、偏心動台車と付随台車からなるボギー車の形態をしています。この設計により、車両は安定した走行が可能であり、当時の交通機関としては先進的なものでした。また、片側には鮮魚を運搬するための専用スペースが設けられており、地域の特産物を運ぶための役割も果たしていました。

搭載されているエンジンは、ウォーケシャ6SRLで出力は60.2kWです。変速機は機械式で、シンプルであるが故に整備も容易でした。このような技術は当時の鉄道運行にとって重要な要素でした。

戦時中の運用

しかし、戦時中はガソリンの不足が深刻な問題となり、この車両は付随車として他の機関車、例えばキハ23や蒸気機関車に牽引されて運行されるようになりました。戦後になると、再びガソリンカーとしての運用が復活しましたが、1950年に駄知線が電化されたことにより、その役割は変わることになります。

この時、キハ10形気動車は笠原線に転属され、再び付随車等として使われることになりました。この転換は、鉄道の時代の変遷を反映するもので、時代によって運用される形が変化する様子が窺えます。

廃車とその後

1963年にこの車両は廃車となりましたが、その存在は地域の鉄道史において重要な意味を持っています。短いながらも特異な役割を果たしたキハ10形気動車は、地域の交通手段の変化を象徴する存在だったのです。

まとめ

東濃鉄道キハ10形気動車の歴史は、ただの鉄道車両のそれに留まらず、地域社会における文化と産業の変遷も映し出しています。日本の鉄道史における貴重な一ページとして、今も語り継がれることでしょう。忘れがたい存在であり、次世代へと伝えられていくべき貴重な遺産といえます。

参考文献としては、清水武の著書『東濃鉄道』が挙げられます。こちらはネコ・パブリッシングから出版されており、鉄道ファンだけでなく、歴史に興味を持つすべての人にお勧めの一冊です。

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