東部山岳州 (パプアニューギニア)

東部山岳州（Eastern Highlands Province）は、南太平洋に位置する島国パプアニューギニアを構成する行政区画の一つです。ニューギニア島の東部にあり、特に内陸部の山岳地域に広がっています。州の政治・経済の中心地である州都はゴロカに置かれています。

総面積はおよそ11,200平方キロメートルに及び、2011年の国勢調査によれば、その人口は579,826人でした。この州はその名の通り、険しい山々と広大な谷が織りなす複雑な地形を主要な特徴としています。同時に、文化や言語の多様性においても非常に豊かな地域です。

地形

州の地勢は、大部分を占めるごつごつとした山地と、それらの間に広がる大きな谷で構成されています。特にマーカム谷やラム谷といった主要な谷筋には、川沿いに形成された比較的標高の低い平坦な土地も見られます。

州内にはいくつかの目立った高山が存在します。クラツケ山脈に属するテーブルトップ山は標高3686メートルを測り、その壮大な姿を見せます。さらに、ビスマーク山脈の一部であるミカエル山は標高3750メートルに達し、この州で最も高い峰の一つです。これらの山々は、地域の景観を形作るだけでなく、気候パターンや生態系にも重要な影響を与えています。

住民と文化

東部山岳州は、多様な民族集団がそれぞれの文化と伝統を守りながら暮らしている地域です。この州で有名な文化の一つに、アサロ族の「マッドメン」（Asaro Mudmen）が挙げられます。彼らは全身を泥で覆い、粘土で作ったマスクをかぶる独特の姿で知られ、パプアニューギニアの文化的なシンボルの一つとして、国内外から注目を集めています。彼らの伝統的な儀式やパフォーマンスは、地域の豊かな歴史と文化を現代に伝えています。

言語

東部山岳州の最も際立った特徴の一つは、驚くべき言語の多様性です。比較的小さな地域にもかかわらず、約20もの異なる言語がこの州で話されていると記録されています。これらの言語は、それぞれの共同体や民族集団のアイデンティティと深く結びついており、世代を超えて文化や知識を継承する重要な手段となっています。

州内で話されている言語は、地区によってその分布が異なります。

ゴロカ地区: ベナベナ語、シアネ語、ガフク・アサロ語（アレカノ語とも呼ばれる）、ヤガリア語などが主に話されています。
ヘンガノフィ地区: カマノ語（カマノ・カフェ語とも称される）が用いられています。
カイナントゥ地区: カマノ語のほか、アガラビ語、ガドスプ語、タイロラ語、アワ語、ビヌマリエン語など、特に多様な言語が見られます。
ルファ地区: チュアヴェ語が話されています。
オブーラ・ウォネナラ地区: タイロラ語とシンバリ語が主要な言語として存在します。
オカパ地区: フォレ語、ギミ語（ラボガイ語とも呼ばれる）、アウヤナ語（アウィヤーナ語とも称される）、アワ語、ウサルファ語といった言語が確認されています。

上記の地区ごとの言語に加え、特定の地区は特定されていないものの、東部山岳州内で話されていることが確認されている言語も存在します。これには、イークワラカマルジェ地域で話されるヤグウォイア語や、マラワカ地域でバルヤ語（イプマ語とも称される）が含まれます。

これらの多様な言語の存在は、この地域の複雑な民族構成や歴史的な交流の背景を示唆しています。それぞれの言語は独自の構造と語彙を持ち、各コミュニティの独自の文化や世界の捉え方を反映しています。パプアニューギニア全体が「言語の宝庫」として知られていますが、東部山岳州はその中でも特に顕著な多様性を示す地域の一つと言えるでしょう。言語の維持と研究は、この貴重な文化遺産を未来に伝えるために重要な課題となっています。

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