東郷彪

東郷 彪 (とうごう ひょう)

概要

東郷彪は、1885年に鹿児島県で生まれた日本の農商務官僚、宮内官僚、政治家です。彼は父の東郷平八郎の息子であり、侯爵となり貴族院議員としても活動しました。彼の人生は、農業や菊の栽培に対する情熱にあふれていました。

来歴

東郷彪は明治18年に誕生し、学習院から中学済々黌を経て1911年に東京高等農学校を卒業しました。この学校は後に東京農業大学となります。卒業後は農商務省の一部である農事試験場に勤務し、その後イギリスに留学しました。大正時代の約3年間、イギリスでの経験は彼の人生に大きな影響を与えました。

帰国後、彼は宮内省に勤め始め、新宿御苑での菊栽培に力を入れました。菊は日本文化の重要な一部であり、彼は菊作りで大きな功績を残しました。特に、昭和2年には京都二條離宮での御大礼用の特別な菊を栽培し、皇室の行事に貢献しました。彼は昭和9年に宮内省から退官し、その後の数年間は菊の栽培に専念しました。

彼の父の死後、東郷は侯爵としてその地位を襲ぎ、貴族院議員となりました。彼は火曜会に加盟し、1947年（昭和22年）に貴族院が廃止されるまで議員として活動を続けました。彼の墓所は多磨霊園にあります。

人物

東郷は温和で地味な性格でした。視力が悪かったため海軍の道を諦めたとのことですが、彼の運動神経は父譲りとされ、宮内省で行われるゴルフコンペでは多くの賞を受賞しています。また、東郷は新宿御苑での菊作りに従事しており、この活動が彼の人生の中心的な要素となりました。

菊栽培を始めた背景には彼に対するある校長の勧めがあったとされています。この校長は「貴族の息子は百姓をやるのが一番良い」と言い切り、東郷はこれを受け入れています。このエピソードは岡潔の随筆から伝わっています。

趣味と収集

東郷は黒猫の置物のコレクションに情熱を注いでいました。彼の邸宅には3,000体以上の黒猫が収集されており、中には国宝級のものも含まれていたと言われています。このコレクションは「黒猫の間」に収められ、経歴の中でユニークな一面を見せています。彼のコレクションは公私ともに充実した彼の人生の象徴となっていました。

著作

彼の著作「吾が父を語る」は1934年に実業之日本社から刊行され、父の東郷平八郎との関係やその影響を述べています。これは彼の思想や生涯を知る貴重な作品です。

親族

祖父: 東郷実友 - 薩摩藩士
父: 東郷平八郎 - 海軍軍人
伯父: 東郷実猗 - 薩摩藩士
叔父: 東郷実武 - 薩摩藩士
弟: 東郷実 - 海軍軍人
妻: 百合 - 小原駩吉の長女
長女: 東郷良子

栄典

彼は1940年に紀元二千六百年祝典記念章を受章し、その貢献が認められました。彼の生涯におけるさまざまな役割は日本の近代史に刻まれています。

参考文献

貴族院要覧（丙） - 昭和21年12月増訂、貴族院事務局
* 議会制度百年史 - 貴族院・参議院議員名鑑 - 大蔵省印刷局

東郷彪はその業績を通じて、日本の農業や文化において重要な役割を果たした人物であり、彼の影響は今もなお色あせることはありません。

もう一度検索