東郷文彦

東郷文彦の生涯

東郷文彦（とうごう ふみひこ）は、1915年8月18日に東京府で生まれ、1985年4月9日に亡くなった日本の外交官です。戦後の日本外交において重要な役割を果たし、特にアメリカとの関係構築に寄与しました。彼は、外務事務次官や駐アメリカ大使を歴任し、日本の国際的地位の確立に貢献しました。

出生と教育

彼の旧姓は本城であり、東郷茂徳元外相の娘である東郷いせと結婚し、婿入りすることにより東郷姓を名乗りました。東郷は1932年に東京高師附属中学を卒業した後、旧制第一高等学校に進学し、1939年3月には東京帝国大学法学部政治学科を修了しました。

大学卒業後、東京帝国大学法学部から外務省に入省し、同年4月からはアメリカのハーバード大学大学院に留学しました。この留学中に名を馳せた著名な文化人の一人、鶴見俊輔とも親交を深めました。

戦争と抑留

しかし、日米開戦が勃発した1941年12月、外交官補としてハーバード大学に在学していた彼は、米国当局に連行されました。ボストンの移民収容所に約1週間収容された後は、ワシントンの日本大使館やバージニア州のホットスプリングス、さらにはウェストバージニア州のグリーンブライアで、合計300名以上の在米日本人と共に軟禁生活を余儀なくされました。この経験は、彼の人生と外交観に深い影響を与えたことでしょう。

1942年6月、日米の抑留者を交換する船に乗船し、ニューヨークを出港。その後、1943年8月に帰国を果たしました。

結婚と家族

帰国後の1943年11月、彼は義父である東郷茂徳の娘、いせと結婚しました。いせは一人娘であったため、文彦は東郷家の養子となりました。彼の家庭からは、外交官としての道を歩む息子、東郷和彦とジャーナリストとして活躍する息子、東郷茂彦が誕生しています。

政治生活

義父の再任時期には、鈴木貫太郎内閣で秘書官を務め、終戦処理に関与しました。1963年にはニューヨーク総領事に着任し、さらに1967年には外務省アメリカ局長に昇進。安保改訂や沖縄返還交渉の際には重要な実務責任者として活動しました。

1974年には外務事務次官に就任し、1975年から1980年までワシントンで駐アメリカ大使を務めました。彼の活躍を通して、日米関係の深化に大きな影響を及ぼしました。

著作と回想

東郷文彦は、自身の外交経験を基に書かれた著作も多く、その中には『日米外交30年 ‐安保・沖縄とその後』や、義姉が記した『色無花火 東郷茂徳の娘が語る「昭和」の記憶』などが含まれます。これらは彼の外交姿勢や、当時の国際情勢を理解するための貴重な資料となっています。

まとめ

東郷文彦は、戦後日本において外交の基盤を築いた功績を持つ人物として記憶されています。その生涯は波乱万丈でしたが、彼の外交に対する情熱と努力は、多くの後進に受け継がれています。

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