東雲節

東雲節（しのゝめ節）とその背景

「東雲節」または「しのゝめ節」、別名「ストライキ節」と呼ばれるこの楽曲は、明治後期の1900年頃に流行した日本の流行歌の一つです。端唄や浮世節、さらには演歌としても位置づけられ、一般的にはその作詞や作曲者は不明です。しかし、歌詞の内容からは、廃娼運動が反映されていると考えられています。

この曲が「ストライキ節」として知られるようになったのは、主に横江鉄石と添田唖蝉坊によるものでした。ただし、歌詞には様々な異同が見られ、統一されたバージョンは存在しません。特に、歌い出しの「何をくよくよ川端柳」という表現は、都々逸として広く知られており、原型が高杉晋作によるものであるとも言われています。

歌詞の特徴と解釈

「何をくよくよ川端柳、焦がるるなんとしょ、水の流れを見て暮らす、東雲のストライキ」という歌い出しは、切羽詰まった心情を表しており、歌の背後にある社会的なメッセージを感じさせます。この歌詞は、ストライキを通じた廃娼の声を代弁しているとも解釈されています。

添田唖蝉坊は、彼と横江鉄石がこの楽曲を作成した背景を文書にしています。彼の息子・添田さつきによると、歌詞は唖蝉坊のもので、曲は「パツパよかちよろ」に基づいているとも述べています。唖蝉坊は作成の意図について「私たちのはストライキの事実があっての作品ではなく、自廃で飛び出すことをストライキとして表現した」と語っており、後に東雲楼の娼妓たちが実際にストライキを行った事件とも関連付けられています。

廃娼運動と地域の背景

この楽曲が流行した背景には、日本各地で起こった廃娼運動があります。特に名古屋での廃娼運動に関連する事件が広く語られています。一説には、「東雲」という名の娼妓が廓を脱出したことをうたったものとも言われています。また、名古屋の東雲楼でのストライキも背景にあると言われることがあります。

このような事例には、娼妓の東雲がアメリカの宣教師の助けを受けて退楼した話も含まれますが、その事実は経営者から否定されています。実際、名古屋の旭新地に位置する東雲楼でのストライキの真偽についても、当時の経営者が否定的な証言をしたことで、歴史的な確認は困難です。

熊本でも、1900年に全国的な廃娼運動が影響を及ぼし、自由廃業を求める声が高まりました。その中で、熊本の二本木遊郭で経営されていた「日本亭」が後に「東雲楼」と改称され、そこに関連した楽曲が成立したとされています。この現象は、地域社会の移り変わりや、娼妓たちの社会的立場を反映していると言えるでしょう。

歌詞のさらなる探求

また、歌の別のバージョンには、公的な記録として残っている「花岡山から東雲みれば、倒るるナントショ、金はなかしま（中島）、家も質（茂七）……」という歌詞もあります。このように、歌詞には地域の登場人物や出来事が描かれており、その中には風刺的な要素も含まれています。はっきりとしたストーリーは不明であっても、これらの歌詞は当時の社会状況を反映し、多くの人々の共感を得る要素を持っていたのです。

「東雲節」は、ただの流行歌にとどまらず、当時の社会の声を反映した重要な文化遺産とも言えるでしょう。この歌を通じて、私たちは明治期の日本社会の複雑さと、廃娼運動に参加する女性たちの勇気を感じ取ることができます。

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