都々逸

都々逸（どどいつ）について

都々逸は、江戸末期に初代の都々逸坊扇歌（1804年 - 1852年）によって大成された、日本の口語による定型詩の一つです。この詩は、特に七・七・七・五という音数律に従って構成され、主に男女の恋愛をテーマにしているため、情歌とも呼ばれています。元々は三味線に合わせて歌われることが多く、音曲師によって寄席や座敷などで演じられていました。

都々逸の形式

都々逸では、基本的に七・七・七・五の音数律が採用されていますが、五字冠りと呼ばれる形式もあり、これは五・七・七・七・五の構成を持っています。具体的な作品例としては以下のようなものがあります：

• - 「惚れて通えば 千里も一里 逢えずに帰れば また千里」
• - 「三千世界の 鴉を殺し ぬしと朝寝（添い寝）が してみたい」
• - 「立てば芍薬 坐れば牡丹 歩く姿は 百合の花」
• - 「岡惚れ三年 本惚れ三月 思い遂げたは 三分間」

これらの作品は、作者不詳のものも多く、時には有名な歴史的な人物が関わった作品も含まれています。例えば、井伊直弼が作っている「逢うて別れて 別れて逢うて」がその一例です。

発祥とその背景

都々逸の発祥の地として名古屋が挙げられることがあります。扇歌は当時流行していた「よしこの節」を基に、名古屋節の要素を取り入れたとされています。このように都々逸が広まった要因の一つには、扇歌自身が優れた演者であったことと、比較的簡単に歌えるために多くの江戸庶民に親しまれたことがあります。

音律の多様性

都々逸は、その七・七・七・五の形式だけでなく、他の音律形式も取り入れながら発展してきました。潮来節、投節、弄斎節など、全国各地の民謡の影響を受け、古くから歌われている有名な歌詞の中には、他の俗謡から借用されたものも散見されます。

例えば、「恋に焦がれて 鳴く蝉よりも 鳴かぬ蛍が 身を焦がす」という歌は、山家鳥虫歌にも見られるフレーズです。このような音律のつながりから、都々逸は日本の音楽文化において重要な位置を占めています。

現代における都々逸

近年では、都々逸は少なくなりつつありますが、昭和の中頃までは寄席の重要な一部として演じられていました。即興での歌唱や、他の音曲との組み合わせで演じる「アンコ入り」と呼ばれるスタイルも多く、演者の技術が光る部分でもありました。また、悩みや喜び、風刺をテーマにしたバレ句も残っています。

都々逸は、古くから伝承されたものだけではなく、現代の文芸形式とも結びついています。明治の時代には、都々逸を書くことを楽しむ作家たちが現れ、新聞などで作品を募集することもありました。今日においても、都々逸は日本の文学や音楽の文化に深く根付いた存在であり続けています。

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