松井塚古墳

松井塚古墳の概要

松井塚古墳（まついづかこふん）は、大阪府南河内郡太子町の山田にあった古墳で、磯長谷古墳群の一部を構成していました。この古墳は、その存在が1958年に民家の井戸掘り時に偶然発見され、同年中に大阪府教育委員会による発掘が行われました。発見当時、古墳はその墳丘を失っていましたが、周囲の遺構や出土品から多くの情報が得られました。

この古墳は、大阪府の南東部、特に二上山のふもとに位置しており、谷を形成する尾根の南斜面に築かれたと考えられています。墳形については具体的な形状は明確ではありませんが、一般には方形の古墳であったと推測されています。

埋葬施設の特徴

松井塚古墳の埋葬施設は、横穴式石室で、南方向に開口していました。この石室の構造には唐尺が使用された可能性が示唆されており、床面には礫石が敷き詰められていました。その上には、二上山で採取された凝灰岩製の刳抜式家形石棺が据えられており、石棺の長さは約2.5メートル、幅は約1.3メートルです。加えて、石棺の前部には石扉も見受けられ、古墳の装飾的な要素を示しています。

残念ながら、石棺は盗掘に遭っており、その調査からは2体分の人骨や、須恵器、土師器の破片のみが発見されました。このことから、松井塚古墳が当時の埋葬習慣や社会構造を理解する上で貴重な資料となっています。

古墳の時代的背景

松井塚古墳は、古墳時代の終末期、具体的には7世紀中葉に築造されたことが推定されています。この時期は古墳の形態や埋葬方法が変化し、地域社会や政権の変動があった重要な時代です。発見当初から、この古墳が推古天皇の陪塚の可能性も指摘され、後にその石室の大きさから大化の薄葬令に関連する重要性も認識されています。

文化財指定と移築

松井塚古墳の石棺は、1973年に大阪府指定の有形文化財に指定され、現在は太子町立「太子・和みの広場」に移設され、一般に展示されています。この移設により、古墳の文化的価値が継承され、多くの訪問者にその歴史を伝える役割を果たしています。

この古墳は、古墳時代における埋葬習慣や社会的背景を考察する上で欠かせないものであり、特に横口式石槨の変遷を研究する上でも重要な実例として位置づけられています。松井塚古墳の調査や研究は、これからも続けられていくことでしょう。

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