松原正毅

松原正毅：遊牧社会研究の先駆者

松原正毅（まつばら まさたけ、1942年3月15日 - ）は、日本の著名な社会人類学者です。国立民族学博物館名誉教授、総合研究大学院大学名誉教授として、長年にわたり社会人類学、特に遊牧社会論の研究に尽力されました。その研究は、トルコや中央アジアの遊牧民の生活、文化、社会構造に光を当て、国際的にも高い評価を受けています。

生い立ちと学歴

広島市に生まれ、愛媛県松山市で育った松原氏は、1960年に愛光高等学校を卒業後、京都大学文学部へ進学。考古学を専攻し、1965年に卒業。その後、京都大学大学院文学研究科に進み、修士課程を修了。博士課程を中退後、研究者の道を歩み始めました。

研究活動

松原氏の研究は、フィールドワークを重視し、遊牧民の生活に深く入り込むことで、彼らの社会や文化を理解しようとする姿勢が特徴です。トルコ系遊牧民ユルックの研究をはじめ、青蔵高原、カザフなど、広範な地域で調査を実施。その成果は、『遊牧の世界：トルコ系遊牧民ユルックの民族誌から』、『青蔵紀行：揚子江源流域をゆく』、『遊牧民の肖像』などの著書にまとめられ、多くの読者に遊牧民の世界を紹介しました。

学術的な貢献

国立民族学博物館では、助教授、教授として研究に従事。地域研究企画交流センター長、民族社会研究部長などを歴任し、博物館の研究活動を牽引しました。また、総合研究大学院大学では、後進の育成にも力を注ぎました。学外でも、司馬遼太郎記念財団の監事、常務理事、大阪外国語大学理事などを務め、文化の振興に貢献しました。

受賞歴

松原氏の業績は、数々の賞によっても認められています。1976年には、「トルコの村の家族と親族：南西アナトリアの一村の事例から」で流沙海西奨学会賞、1991年には、『遊牧民の肖像』でアジア・太平洋賞特別賞、1994年には、トルコ系遊牧民における文化人類学的研究の推進に対して大同生命地域研究奨励賞を受賞しています。

司馬遼太郎との親交と坂の上の雲ミュージアム

生前の司馬遼太郎氏と親交があり、その縁で2007年4月に開館した坂の上の雲ミュージアムの館長に就任（2017年3月末まで）。司馬作品の世界観を伝えるとともに、松山市の文化振興に貢献しました。

主要著作

『遊牧の世界：トルコ系遊牧民ユルックの民族誌から』（中公新書、1983年 / 平凡社ライブラリー、2004年）
『青蔵紀行：揚子江源流域をゆく』（中央公論社、1988年）
『トルコの人びと：語り継ぐ歴史のなかで』（日本放送出版協会、1988年）
『遊牧民の肖像』（角川書店、1990年）
『カザフ遊牧民の移動：アルタイ山脈からトルコへ 1934-1954』（平凡社、2011年）
『遊牧の人類史：構造とその起源』（岩波書店、2021年）

松原正毅氏の研究は、遊牧民の生活や文化に対する理解を深めるとともに、社会人類学の発展に大きく貢献しました。その業績は、今後も多くの研究者や学生に影響を与え続けるでしょう。

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