松山電気軌道

松山電気軌道（まつやまでんききどう）は、明治時代の終わりから大正時代の終わりまで、愛媛県松山市を中心に存在した電気事業及び路面電車運営会社でした。通称は「松電（まつでん）」であり、松山市における交通手段として重要な役割を果たしていました。

この会社は、三津浜港と松山市中心部、さらには道後温泉を結ぶ軌道（路面電車）を整備し、競合する伊予鉄道と激しい乗客争奪戦を繰り広げることになります。競争は10年間続きましたが、ついには伊予鉄道に吸収合併され、松山電気軌道は消滅しました。それでも、路線の一部は現存し、伊予鉄道城南線や本町線として利用されています。

設立と初期の発展

松山電気軌道は、1907年に設立されました。当初の目的は、三津浜港から高浜港への航路変更によって地位が低下することを懸念した地元の有志によって計画されたことに起因しています。鉱山成金の清家久米一郎と弁護士の夏井保四郎が共同で会社を設立しましたが、設立後は資金調達に苦労し、夏井が退職。その後、渡邊修が社長に就任し、資金集めを続けました。

1911年、福澤桃介の支援を受けて、最初の路線が開業しました。この路線は、江ノ口から道後までの区間で、26の駅が設けられました。但し、全区間が単線であり、他の鉄道路線との並行区間においては厳しい競争がございました。

競争と困難

松山電気軌道の運営は多くの困難に直面しました。伊予鉄道も同年内に電化を行い、両社は乗客の獲得を巡って激しい競争を繰り広げ、駅での客引き合戦や運賃値下げ競争が展開されました。1913年には電力事業にも進出しますが、伊予水力電気との契約者獲得を巡って再度競争が激化しました。

合併の話は開業当初から持ち上がりましたが、松山電気軌道は負債を抱えており、合併交渉は難航しました。何度も交渉は破談に終わり、最終的にその結果は松山電気軌道の経営を圧迫し、1914年に近藤貞次郎が社長に就任します。

合併とその後の歴史

1915年、三井物産が松山電気軌道の債権回収を求め、合併交渉が再開され、その後3度の合併契約を試みましたが、全て破棄される結果となりました。激しい経営の中、やがて1921年に松山電気軌道は伊予鉄道に吸収合併され、会社は解散しました。合併後すぐに、1923年には全線の軌間が標準軌から伊予鉄道の狭軌に変更されることとなりましたが、その後一部の路線は早々に廃止されました。

現在の影響

現在、松山電気軌道の競争ゆえに形成された交通インフラは、現代の路線として生かされています。その痕跡は、江戸谷電停や宮前川橋梁跡などに残されています。また、地域への影響も根強く、2022年には松山電気軌道の開業111周年を記念する碑が設立されるなど、その歴史を顧みる機会が設けられています。松山電気軌道は、地域の交通史にも多大な影響を及ぼした重要な存在であったことが伺えます。

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