松平康乂

松平 康乂（まつだいら やすはる）

松平康乂は、江戸時代中期から後期にかけての著名な大名で、美作津山藩の第6代藩主として知られています。彼の官位は従四位下・越後守であり、父は5代藩主の松平康哉です。康乂は、1794年に父の死去を受けて、家督を相続しました。

若き藩主の文化政策

康乂が藩主に就任した同年、彼は特に斬新な文化政策を実施しました。浮世絵師の北尾政美を藩のお抱えとして迎えたことがその一例です。北尾は当時、一介の町絵師に過ぎなかったにもかかわらず、康乂によって正式に藩の絵師として雇用されることとなりました。これは非常に異例なことでしたが、北尾は老中の松平定信とも親しい関係にあり、また康乂自身も定信との親交があったことが背景にあると考えられています。

北尾の採用は単なる芸術家の保護にとどまらず、彼が得意とする俯瞰構図や遠近法を駆使した描画技術を藩の政治や軍事に活かすことを狙ったものであったとも言われています。彼の技術は、従来の平面的な地図や絵図と異なる新たな視覚表現をもたらし、藩政に新風を吹き込むことを意図していました。

農業振興への取り組み

康乂の藩政下では、農業にも力を入れ、領内に観農所を設置しました。これにより、藩の農業振興や領民の生活向上を図る努力が続けられました。特に、彼は農業生産の向上を目指す施策を推進し、藩の財政基盤を強化しようとしました。

短い生涯とその後

しかし、康乂の生涯は非常に短命で、文化2年（1805年）7月13日にわずか20歳で亡くなってしまいます。彼の死去は藩にとって大きな打撃となり、家督は弟の斉孝に継承されました。康乂はその短い生涯の中で、藩の文化や農業政策において重要な足跡を残し、時代背景においても注目される存在となりました。

系譜

康乂の家族に関しては、父は松平康哉、母は柴田久悦の娘で、正室には藤堂高嶷の娘がいました。子供には、松平康哉の三男である斉孝が養子として名を連ねています。

彼の時代背景や活動は、江戸時代の多様な文化の中で彩りを添え、その後の歴史にも影響を与える要素を多く含んでいます。松平康乂の存在は、ただ単に藩主の一人としてだけではなく、文化や農業といった多様な面からも評価されるべきです。

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