松平忠昭 (大給松平家)

松平 忠昭（まつだいら ただあき / ただてる）は、江戸時代前期に大名として生きた人物である。親清流大給松平家の第5代当主にあたり、官位は従五位下・左近将監に叙任された。その生涯において、丹波亀山藩の第2代藩主を皮切りに、豊後亀川藩、豊後中津留藩、豊後高松藩を経て、最終的には豊後府内藩の初代藩主を務めた。

忠昭は元和3年（1617年）11月25日、丹波亀山藩の初代藩主であった松平成重の次男として生まれた。兄の勝広が寛永8年（1631年）12月に早世したため、代わって嫡子の立場となった。寛永10年（1633年）に父である成重が亡くなると、その跡を継いで丹波亀山藩の藩主となった。

藩主となった翌年の寛永11年（1634年）、忠昭は豊後国（現在の大分県）の亀川への転封を命じられた。さらに寛永12年（1635年）には、同じく豊後国内の中津留へと移った。中津留に陣屋を築き、城下町の整備（町割り）に着手したが、この土地が水害に対して脆弱であることが判明したため、幕府に陣屋の移転を願い出た。その願いが認められ、寛永19年（1642年）には領内のより安定した土地である豊後高松に新たな陣屋を建設した（後の高松陣屋）。このように、忠昭は短期間のうちに豊後国内で幾度かの移封を経験することになる。

この時期、寛永14年（1637年）に勃発した島原の乱においては、肥前国（現在の長崎県、佐賀県の一部）の富岡城の守備を担うなど、幕府の軍事行動にも関与した。

明暦2年（1656年）、豊後府内藩の藩主であった日根野吉明が後継ぎを残さず亡くなったため、日根野家は断絶した。日根野吉明の正室は忠昭の叔母にあたるため、忠昭は日根野家の義理の甥という血縁関係にあった。この縁から、明暦4年（1658年）2月24日、忠昭は豊後府内へ2万2,200石での転封を命じられ、豊後府内藩の初代藩主としてこの地に封じられた。

府内藩の藩政を確立するため、忠昭は領内の統治を確立すべく様々な施策を講じた。例えば、領内の社寺に寺領や社領を寄進し、彼らとの関係を深め、領内秩序の安定に努めた。また、新たな田畑を開墾する新田開発にも力を入れたが、この開発は藩が直接行うのではなく、商人の資本と協力を得て進められた。新田開発のような重要な事業を商人に依存していたという事実は、当時の府内藩の財政状況が潤沢ではなく、むしろ脆弱であったことを推測させる材料となる。

延宝4年（1676年）3月27日、忠昭は家督を長男の近陳（ちかのぶ）に譲り、藩主を辞して隠居した。その後は穏やかな晩年を送り、元禄6年（1693年）9月12日に数え年77歳でその生涯を終えた。

家族としては、父に松平成重、母に安藤重信の娘がいる。正室は酒井忠正の娘を迎えた。正室との間には、家督を継いだ長男の近陳のほか、松平近鎮（ちかしげ）、松平近良（ちかなが）という二人の男子、そして中根正延（なかね まさのぶ）に嫁いだ娘と、岡部豊明（おかべ とよあき）に嫁いだ娘らが生まれた。

もう一度検索