松平昭訓

松平昭訓（まつだいら あきくに）

松平昭訓は、江戸時代後期に水戸藩主一門に生まれた人物です。徳川斉昭の十四男として生まれ、母は万里小路睦子。幼名は余四麿と名付けられました。彼は徳川昭武の同母兄であり、15代将軍・徳川慶喜の異母弟という血筋を持っています。

生涯

文久3年（1863年）3月、16歳の若さで昭訓は藩主である長兄・徳川慶篤と共に上洛しました。慶篤はすぐに江戸へ戻りましたが、昭訓は京に残り、駐屯していた水戸藩兵（後の本圀寺勢）の将として活動することになります。

京では、朝廷と幕府、そして各藩の間を奔走する多忙な日々を送りました。各方面への周旋に尽力した昭訓でしたが、若さゆえに攘夷を真剣に捉え、幕府が表面上攘夷を装う「ぶらかし策」を理解できず、そのことに大きな心労を抱えていたようです。そのためか、6月頃から健康を害してしまいます。しかし、世情が騒がしい京において静養することは難しく、8月頃には病状が悪化しました。国許の貞芳院（斉昭の正室）からは帰国して療養するよう勧められますが、昭訓は国家の非常時であるとして、これを断っています。

8月16日、朝廷は昭訓の働きを評価し、従五位下侍従に叙し、左衛門佐の官名を授けました。しかし、病状は悪化の一途をたどり、11月19日には近習に対し、墓は禁裏の方向に向けるようにと言い残し、11月23日にこの世を去りました。

昭訓の死後、孝明天皇は彼の病状が重篤であることを聞き（実際には死去）、特旨をもって従四位下を追贈しました。さらに、昭訓の看病を名目に、弟の誰かを上洛させるよう二条斉敬に伝えました。その結果、当時他家に養子入りしていなかった同母弟・余八麿（後の徳川昭武）が上洛し、昭訓の後任を務めることになったのです（翌年1月に上洛）。

元治元年（1864年）5月11日に喪が発せられ、6月12日には京の東、鷲尾山長楽寺後に埋葬されました。明治44年（1911年）6月1日には、その功績が認められ、贈従三位が贈られました。

松平昭訓は、若くして国事に奔走し、志半ばで亡くなった悲劇の人物として、その名が歴史に刻まれています。

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