松平近儔

松平 近儔

江戸時代中期から後期にかけての動乱期に、豊後国府内藩の第6代藩主として藩政を担った人物が松平 近儔（まつだいら ちかとも）です。親清流大給松平家の10代当主にあたり、従五位下・長門守の官位を有しました。

近儔は宝暦4年（1754年）3月27日、第5代藩主であった父、松平近形の長男として生を受けました。そして明和7年（1770年）7月21日、父・近形が病を理由に隠居したことに伴い、家督を継承し藩主の座に就きました。

藩主としての治世は、度重なる困難に見舞われます。天明6年（1786年）から翌7年にかけての虫害による甚大な凶作をはじめ、享和元年（1801年）にも同様の被害が発生するなど、農業生産に深刻な打撃を与えました。これに加え、大火などの災害が頻繁に発生し、藩の財政は極めて厳しい状況に追い込まれます。しかし、このような苦境にあっても、近儔は藩内の文武の振興に力を注ぎ、府内藩の学問や武芸の発展に寄与しました。

藩政の継続性という点では、近儔は特異な経緯をたどります。実子の近訓がまだ幼かったため、文化元年（1804年）12月6日には実弟である近義を養子に迎え、彼に家督を譲って自身は隠居しました。ところが、その後も近儔は藩政の要職に留まり、隠居の身でありながら藩の政治の実権を掌握し続けます。文化4年（1807年）に養子の近義が死去すると、今度は実子の近訓を新たな藩主として擁立しました。

しかし、成長した近訓とも藩政改革を巡る意見の対立が生じます。結局、天保2年（1831年）には近訓を隠居させ、その養子である近信を藩主の座に就けました。このように、近儔は自らが家督を譲り隠居した後も、約35年間にわたり実質的に藩政の最高権力者として君臨し続けました。そして、天保11年（1840年）2月16日に87歳の生涯を閉じるまで、その影響力は絶えることはありませんでした。

系譜

父母

父：松平 近形

正室

松平 乗祐の娘

子女

松平 近賢（長男）
松平 近訓（次男） - 生母は正室
松平 近喜（三男）
松平 近思（四男）
松平 乗尹 正室
大関 増陽 正室（後に 津田 信富 室）
大沢 基昭 正室（後に 太田 式部 室）
松平 近訓 養女（松平 近信 正室）
石川 総登 正室

養子

松平 近義 - 実弟にあたる

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