松平長親

松平長親

松平長親（まつだいら ながちか）は、戦国時代に活躍した武将であり、徳川家康の高祖父にあたります。松平親忠の三男として生まれ、安祥松平家を創始しました。

生涯

1496年、長親は安祥城主となり、安祥松平家を興しました。しかし、当時、駿河の今川氏親の侵攻を受け、松平一族は苦戦を強いられていました。長親自身も、今川氏の家臣であった伊勢盛時（北条早雲）と戦った記録が残っています。武勇に優れていただけでなく、連歌などの教養にも通じていたと伝えられています。

宗家岩津松平の討滅と家督継承

1508年、今川氏親の命を受けた伊勢宗瑞率いる今川軍が、岩津城を攻撃しました（永正三河の乱）。岩津城は堅固で、今川軍は苦戦しましたが、長親は救援のため井田野に現れ、今川軍を苦しめました。しかし、最終的に岩津城は落城し、宗家の岩津松平家は衰退。これにより、長親の安祥松平家が松平氏の主導権を握ることになったと考えられています。

同年、長親は家督を長男の信忠に譲り隠居しました。しかし、信忠は暗愚であったため、長親はその後も後見人として影響力を保持。信忠と嫡孫清康を補佐し、今川軍との戦いを続けました。

晩年の後継者問題

隠居後、道閲と号した長親は、信忠を補佐していましたが、信忠の力量不足と人望のなさから安祥松平家は危機に瀕します。家老の嘆願により、信忠は隠居し、清康が家督を継ぐことになりました。晩年、長親は分家した息子たちの中でも、特に桜井家の信定を偏愛しました。清康の死後、幼くして家督を継いだ広忠（長親の曾孫）が信定によって岡崎城を追われた際にも、長親は何も手を打ちませんでした。このため、家臣団の失望を買うことになりました。

後に、広忠と和解し、広忠の嫡男（後の徳川家康）に竹千代と名付けるように命じたとされています。しかし、長親が溺愛した信定は、広忠の代まで家督に固執し、松平一族と家臣団の間に内紛を引き起こし、家康の幼少期の苦難の遠因を作りました。

死去

1544年、長親は死去しました。享年は通説では72歳とされますが、実際の生年を考慮すると90歳であったと考えられています。

人物

長親は武勇に優れているだけでなく、教養も兼ね備えた人物であったと伝えられています。しかし、晩年の後継者問題では、一族に混乱を招いた一面もありました。その生涯は、松平氏の興隆と苦難の歴史を映し出すものと言えるでしょう。

参考文献

平野明夫『三河松平一族』新人物往来社、2002年。
菊池弥門（原著） 『柳営秘鑑』
成島司直編「徳川実紀」『新訂増補 国史大系38』第一篇、吉川弘文館、2007年
大久保忠教（原著）・坪井九馬三（校訂） 『三河物語』、冨山房 1898年
* 大久保忠教（原著）・小林賢章（訳） 『三河物語（上）』、教育社新書、1987年

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