松平親忠

松平親忠（まつだいら ちかただ）

松平親忠は、室町時代中期から戦国時代にかけて活躍した武将です。松平氏の始祖とされる松平信光の三男として生まれました。

生涯

親忠は初め、額田郡鴨田郷（現在の愛知県岡崎市鴨田町）を拠点としていました。父・信光の死後、家督を継承したとされていますが、その時期については長享2年（1488年）または長享3年（1489年）頃とされています。しかし、間もなく出家して西忠と号したため、親忠自身の治世については、あまり詳しいことは分かっていません。また、三男でありながら家督を継いだことについても、一部では疑問視する見解もあります。

『三河物語』によれば、信光は長男に惣領を譲ったとされ、親忠は分家的な立場であったとも伝えられています。しかし、後に安祥松平氏から松平清康・徳川家康が本家を簒奪したことにより、親忠が4代当主として扱われるようになったという説があります。

軍事的な活躍

応仁元年（1467年）8月、第一次井田野合戦で、親忠は品野（現在の愛知県瀬戸市品野町）や伊保（現在の愛知県豊田市保見町）の軍勢を破り、武功を挙げました。この戦いで亡くなった兵士を弔うため、親忠は現在の岡崎市鴨田町字向山の地に千人塚を築きました。

明応2年（1493年）には、第二次井田野合戦で上野城主阿部氏、寺部城主鈴木氏、挙母城主中条氏、伊保城主三宅氏、八草城主那須氏らを破り、その武名を轟かせました。

寺社の創建・再興

文明2年（1470年）、松平氏の氏神を祀る社を、伊賀国から現在の岡崎市伊賀町に移しました。これが伊賀八幡宮の始まりとされています。

文明7年（1475年）には、千人塚の振動や悪病の流行を鎮めるため、塚のほとりに念仏堂（現在の西光寺）を建てました。また、鴨田郷の館跡には、松平氏の菩提寺である大樹寺を創建しました。さらに、文明9年（1477年）には、大恩寺（現在の愛知県豊川市御津町御津山山麓）を中興し、同寺の開基となりました。

晩年

長享元年（1487年）、麻生城の天野景孝を滅ぼし、九男・乗清を分立させ、滝脇松平家を成立させました。明応5年（1496年）には、家督を三男・長親に譲り隠居しました。また、子を分立して大給松平家、滝脇松平家などを成立させたほか、第四子の存牛は出家し、信光明寺住持などを経て、京都の浄土宗総本山知恩院住持を務めました。文亀元年（1501年）8月10日、71歳（または63歳）で亡くなりました。

親忠は、武将としてだけでなく、寺社の創建や再興にも尽力し、松平氏の発展に大きく貢献しました。

脚注

参考文献
平野明夫『三河松平一族』新人物往来社、2002年。ISBN 4-404-02961-6
工藤寛正 編『徳川・松平一族の事典』東京堂出版、2009年。
新行紀一『大樹寺の歴史』大樹寺、1983年4月17日。

もう一度検索