松本哲夫

松本哲夫：多才なデザイナー、その軌跡と功績

松本哲夫（1929年 - 2023年）は、日本の建築、インテリア、そして工業デザイン界において、その才能を発揮した人物です。彼は、剣持勇デザイン研究所の代表取締役を務めた経歴を持ち、多岐にわたるデザイン領域で傑出した作品を数多く残しました。また、後進の育成にも熱心であり、千葉大学都市・建築系同窓会では「松本塾」を開講し、次世代のデザイナー育成に貢献しました。鉄道車両のデザイン組織であるTDO(Transportation Design Organization)のメンバーであったことからも、その活動範囲の広さが伺えます。

工業デザイナーとしての足跡

松本哲夫は、工業デザイナーとして、建築、家具、輸送用機器など、幅広い分野でデザインを手がけました。剣持勇デザイン研究所時代には、剣持勇とともに、誰もが知るヤクルトの容器や、農民車コマツのデザインを担当しました。鉄道車両においては、「快適公共空間としての鉄道車両」をモットーに、JR東日本651系電車（1988年）、JR東日本251系電車（1990年）、新幹線300系電車量産車（1992年）、新幹線400系電車（1992年）など、数々の名車両のデザインを手がけ、鉄道車両の快適性向上に大きく貢献しました。

インテリアデザイナーとしての才能

建築インテリアの分野でも、松本哲夫は卓越した才能を発揮しました。ホテル日航サイパン、京王プラザホテル札幌、広島ターミナルホテルなどのホテル内装、日本航空の特別待合室「サクララウンジ」、日本IBM社のオフィス、山形市庁舎など、多様な建築物のインテリアデザインを担当しました。また、日本郵船のクルーズ船「飛鳥」や日本航空ボーイング747の内装も手がけており、そのデザインは、空間の快適性と機能性を両立させたものでした。

略歴

1953年：千葉大学工学部建築学科卒業
1953年：通産省工業技術院産業工芸試験所技官
1957年：株式会社剣持勇デザイン研究所チーフデザイナー
1971年：株式会社剣持勇デザイン研究所代表取締役就任
1973年：東京大学工学部建築学科非常勤講師（～1982年）
1977年：株式会社剣持デザイン研究所代表取締役
1979年：日本女子大学家政学部住居学科 非常勤講師（～1997年）
1983年：建設省建設大学校講師（～1994年）
1985年：愛知県立芸術大学美術学部 非常勤講師
2001年：愛知県立芸術大学客員教授（～2005年）

受賞歴

松本哲夫のデザインは、国内外で高く評価され、数々の賞を受賞しています。

1958年：ブラッセル万国博日本館金賞（前川國男、山城隆一、渡辺義夫と共同）
1963年：第9回毎日産業デザイン賞
1964年：ニューヨーク近代美術館20世紀デザインコレクション選定
1971年：第16回毎日産業デザイン特別賞（大阪万国博ストリートファニチャーデザイン）
1971年：日本インテリアデザイナー協会賞（JAL-B747のインテリアデザイン）
1975年：日本サインデザイン協会賞（新宿三井ビルサイン計画）
1995年：国際インテリアアーキテクト/インテリアデザイナー連合－IFI大賞
2008年：グッドデザイン・ロングライフデザイン賞（ヤクルトの容器デザイン）
2010年：第1回インテリアプランニングアワード2010優秀賞（霞山会館のインテリアデザイン）

松本哲夫は、日本のデザイン界に多大な足跡を残した、創造性豊かなデザイナーでした。彼の作品は、今もなお多くの人々に影響を与え続けています。

参考文献

「アートサロンVol.29 松本哲夫(デザイナー)」『発明』第90巻第5号、発明推進協会、1993年5月、57-60頁

外部リンク

剣持デザイン研究所
日本美術オーラル・ヒストリー・アーカイヴ:松本哲夫オーラル・ヒストリー　2005年11月18日

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