松本安司 (野球)

松本 安司

松本 安司（まつもと やすし、1960年7月3日 - ）は、日本の元野球選手。投手、のちに外野手としてプレーし、特に1988年のソウルオリンピックでは野球日本代表の主力としてチームを牽引し、銀メダル獲得に大きく貢献したことで知られています。

岐阜県出身の松本氏は、大垣市立北中学校時代はサッカー部に所属し、フォワードとして県大会ベスト4に進出するなど運動能力の高さを示していました。岐阜第一高校でも当初はサッカー部でプレーしていましたが、高校3年の春に球技大会での活躍が野球部顧問の目に留まり、熱心な誘いを受けて野球部へ転部しました。転部後、投手としての高い素質を開花させ、3年夏の県予選ではエースとしてチームを牽決勝へ導く活躍を見せました。しかし、この準決勝では県岐阜商との接戦の末、9回に決勝点を許し惜敗。甲子園出場は叶いませんでした。

高校卒業後、1979年に三菱自動車工業に入社し、愛知県に拠点を置く社会人野球チーム、三菱名古屋に入部しました。当初は投手としてプレーしていましたが、1980年の社会人野球日本選手権での登板後、肘の故障に見舞われ、これを機に外野手への転向を決意しました。外野手として打撃に磨きをかけ、チームの主力へと成長していきます。

都市対抗野球大会には、所属チームの出場に加え、多くの大会で他の強豪チームに補強される形で出場機会を得ました。1982年には電電北陸の補強選手として初めて都市対抗に出場し、安打を記録。その後もNTT東海、国鉄名古屋、西濃運輸、日本新薬といったチームの補強選手として、都市対抗の常連となりました。特に1987年にはNTT東海の補強選手として出場し、中西親志選手と共に打線の中心を担い、大会で3本の本塁打を放つ活躍を見せました。この大会での功績が認められ、首位打者賞と優秀選手賞を獲得。チームは準決勝に進出しましたが、ヤマハに惜敗しました。

1987年にはインターコンチネンタルカップ日本代表にも選出され、この年に初めて社会人野球ベストナイン（外野手）を受賞するなど、国内トップクラスの外野手としての地位を確立しました。そして野球が公開競技となった1988年のソウルオリンピックでは、日本代表に選出されます。筒井大助選手や中島輝士選手らと共に野手陣の要としてチームをまとめ、銀メダル獲得に大きく貢献しました。大会では全5試合に左翼手として先発出場。主に6番または7番打者として打率.300、チーム2位タイとなる4打点をマークしました。特に決勝のアメリカ戦では、後にメジャーリーグで活躍するエース、ジム・アボット投手から先制打を放つなど、国際舞台でもその勝負強さを見せつけました。

ソウル五輪後も社会人野球でプレーを続け、1988年の都市対抗でもNTT東海に補強され準決勝に進出しましたが、東芝に敗れました。この時の正捕手で、ソウル五輪でも共に戦った古田敦也選手（トヨタ自動車から補強）とは、現役引退後も交流を深めています。その後も都市対抗には補強選手として出場を続け、1993年には社内の京都野球部に移籍し、選手兼コーチとして活動しました。

1994年には日本新薬の補強選手として都市対抗に出場。この大会で、自身が所属するチームとしての出場がない年も含め、都市対抗通算11回目の出場を達成。1985年からの10年連続出場が表彰されました。この大会の準々決勝、対日産自動車九州戦では3安打4打点と活躍し、放った本塁打は当時歴代4位となる都市対抗通算10本目の記録となりました。この大会で4度目の優秀選手賞を受賞した松本氏は、大会後に現役引退を表明しました。

引退後は三菱重工名古屋の副部長としてチーム運営に携わり、2018年にチームが社会人野球日本選手権大会で初の全国制覇を成し遂げる瞬間を見届けました。

その選手生活は、投手から外野手への転向、所属チームだけでなく多くのチームで補強選手としてプレーし続けたこと、そして国際大会での輝かしい実績、都市対抗野球における数々の記録達成など、まさに社会人野球を代表する選手の軌跡と言えるでしょう。

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