松本長

松本長の生涯と業績

松本長（まつもと ながし、1877年11月11日 - 1935年11月29日）は、静岡市出身のシテ方宝生流能楽師であり、その芸術活動を通じて日本の伝統文化に大きく貢献しました。長は松本金太郎の次男として生まれ、高い品位を持つ芸風で多くの人々に愛されました。

経歴の初期

1884年、彼は上京し、明治天皇の行幸能で子方として参加しました。この経験が彼の能楽師としての道を開くきっかけとなりました。1892年には、宝生流の16代家元である宝生九郎に入門し、厳しい稽古を経て成長を遂げました。彼はその後、同じく才能ある能楽師の野口兼資と共に、宝生流の双璧として知られるようになりました。

芸風と作品

松本長は、その端正で品位の高い芸風で名声を博しました。彼の唱えた「卒都婆小町」は、特にレコード（SP盤）に残されており、この作品からも彼の才能を感じることができます。また、1920年代には高浜虚子の門下で俳句を学び始め、これをきっかけに句謡会を発足。虚子の晩年まで続いたこの会は、松本にとって重要な芸術的交流の場となりました。

また、彼は著書「松韻秘話」を執筆し、自身の芸術に対する深い考察を読者に提供しました。詩的な表現と、能楽の世界観を融合させた作品は、高く評価されております。

晩年の出来事

1935年11月28日、松本長は早稲田の大隈会館で開催された永楽宝生会主催の例会に出演し、「国栖」を謡っている最中に卒倒しました。すぐに手当てが施されましたが、意識は回復することなく、翌日の11月29日に脳溢血のために大隈会館内でこの世を去りました。彼の葬儀は同年12月2日に青山斎場で行われ、宝生会葬として多くの人々がその遺徳を偲びました。

家族の関係

松本長は芸術家の家系であり、長男の松本たかしは俳人として活躍し、次男の松本惠雄は人間国宝の能楽師として広く知られています。また、泉鏡花の従兄にもあたるなど、彼の血筋には多くの才能が宿っていました。

脚注と関連項目

松本長の業績は、野口兼資とも深い関係があり、その影響は今なお日本の伝統芸能に色濃く残っています。彼の残した足跡は、多くの後進たちに影響を与え続けており、今後もその名は語り継がれていくことでしょう。

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