松柳亭鶴枝

松柳亭 鶴枝

松柳亭鶴枝（しょうりゅうてい かくし）は、落語界、特に百面相芸において受け継がれる名跡です。この名前は、三代目の死去からおよそ78年間途絶えていましたが、2025年3月に四代目が襲名したことにより、現代に再びその名が響くこととなりました。

歴代の松柳亭鶴枝

正式な代数には数えられていませんが、初代春風亭柳枝の門下には「代外」とされる松柳亭鶴枝がいた可能性が指摘されています。天保末期から安政にかけて活動したとみられますが、その詳細は不明です。

初代

初代松柳亭鶴枝は、本名を北川藤吉といい、1846年7月に生まれたとされています。二代目春風亭柳枝門下で噺家となりますが一度廃業し、幇間（たいこもち）を経た後に初代談洲楼燕枝の門下で「鶴枝」を名乗りました。

初代は「生人形」と呼んだ百面相を得意とし、特に歌舞伎役者、中でも十代目片岡仁左衛門の顔真似に秀でていたため、「松嶋屋」と呼ばれていました。また、蛸が茹で上がる様子を表現する「鮹のゆであがり」はこの初代が創始した芸であり、「上赤の鮹」という口癖があったと伝えられています。鹿芝居にも度々出演し、明治30年代初め頃まで活動が見られますが、没年は定かではありません。

二代目

二代目松柳亭鶴枝、本名高橋喜太郎は、1863年5月13日に生まれ、1923年4月1日に59歳で亡くなりました。彼の芸歴は複雑で、春風亭柳花の門を出発点に、五明楼玉輔、三遊亭圓右、三升亭小勝を経て、最終的に三代目柳家小さんの門下で二代目を襲名しました。墓は妙源寺にあります。

二代目は初代の「生人形」を受け継ぎ、「百面相」として演じました。人物から動物まで幅広い百面相を得意とし、特に初代から芸を学ぶことに熱心でした。初代からは最初は教えを渋られましたが、晩年の病床でついに伝授されたという逸話が残されています。上方では「タコの鶴枝」と呼ばれ、風貌だけでなく初代から受け継いだ「鮹のゆであがり」も評判でした。彼の弟子に三代目松柳亭鶴枝がいます。

三代目

三代目松柳亭鶴枝、本名尾藤三五郎は、1895年生まれ、1947年3月6日に51歳で亡くなりました。二代目松柳亭鶴枝に師事し、「古松家鶴輔」として1913年に初舞台。1924年6月には真打に昇進し、同時に三代目を襲名しました。神田白梅亭で襲名披露が行われています。墓は新宿区の法蔵寺です。

三代目は当時の世相を取り入れた百面相や風俗の擬態化、小道具を使った形態模写や顔真似に力を入れました。第二次世界大戦中に芸界から引退していますが、その詳しい理由は不明です。三代目は、著名な歌手・俳優である尾藤イサオの父であり、歌手・女優の尾藤桃子の祖父にあたります。

名跡の復活

三代目の死後、長く空き名跡となっていた松柳亭鶴枝の名は、2025年3月に四代目が誕生したことで、約78年ぶりに再び高座に登場することとなりました。

もう一度検索