松永是

松永 是（まつなが ただし）

松永 是（まつなが ただし）氏は、日本の著名な工学者であり、生物工学を専門としています。特に生物磁石、マリンバイオテクノロジー、生物電気化学といった分野において、先駆的な研究成果を数多く発表してきました。1949年8月27日に千葉県で生まれ、長年にわたり教育・研究機関の要職を歴任し、科学技術の発展に大きく貢献しています。

経歴と学問的貢献

松永氏は、名門として知られる開成中学校・高等学校を経て、1974年に東京工業大学（現在の東京科学大学）工学部合成化学科を卒業しました。その後、同大学大学院総合理工学研究科電子化学専攻に進学し、1979年に博士課程を修了して工学博士の学位を取得しています。大学院在籍中には日本学術振興会の奨励研究員としてその才能を発揮し始めました。

研究者としてのキャリアは、1980年に東京工業大学資源化学研究所の助手としてスタートしました。翌年には米国マイアミ大学で研究員として研鑽を積み、国際的な視野を広げました。1982年には東京農工大学工学部に移り、資源応用化学科の助教授に就任。以後、長きにわたり同大学を拠点に研究と教育に携わります。1989年には工学部物質生物工学科の教授に昇進し、1995年からは工学部生命工学科の教授として、新たな分野の開拓に取り組みました。

東京農工大学では、研究者・教育者としてだけでなく、組織運営においても重要な役割を果たしました。1994年に共同開発センター長を務めた後、2001年には工学部長および大学院工学研究科長に就任し、学部・研究科の運営を統括しました。さらに、2007年には国立大学法人東京農工大学の理事・副学長として大学全体の経営に関与し、2011年にはついに東京農工大学の学長に就任。大学のリーダーとして、教育・研究環境の向上や大学改革を推進しました。

学長退任後も、2017年からは早稲田大学理工学術院の教授として、また東京農工大学の特別招聘教授として、後進の指導にあたっています。指導学生の中には、後に早稲田大学教授となる竹山春子氏などがいます。

要職の歴任と社会への貢献

松永氏は、アカデミアの枠を超え、国内外の様々な機関や学会で要職を歴任し、科学技術分野の発展に貢献しています。

• - 2005年：マリンバイオテクノロジー学会会長
• - 2011年：電気化学会会長
• - 2019年9月：国立研究開発法人海洋研究開発機構（JAMSTEC）理事長
• - 2020年9月：国立研究開発法人協議会副会長、国立研究開発法人協議会運営課題分科会長

特にJAMSTEC理事長としては、海洋科学技術の研究開発を推進する国立研究開発法人のトップとして、我が国の海洋に関する知見の深化とイノベーション創出を牽引しています。

受賞と栄誉

その長年の功績は高く評価されており、数多くの賞や栄誉を受けています。

1993年：繊維学会賞
1994年：日本化学会学術賞
2003年：カーネギー財団カーネギーセンテナリー教授賞
2003年：ヘリオット・ワット大学（英国）名誉科学博士号
2004年：日本生物工学賞
2008年：東京都技術振興功労表彰
2025年：瑞宝中綬章

これらの受賞は、松永氏の研究成果が学術的に高く評価されているだけでなく、産業応用や社会貢献においても顕著な成果を上げていることを示しています。特に瑞宝中綬章の受章は、永年にわたる公務（国立大学運営など）に対する多大な功績が国家によって認められたものです。

著作とメディア活動

松永氏は、専門分野に関する多数の学術論文に加え、一般向けの著作も精力的に発表し、科学技術の啓蒙にも努めています。

『バイオ革命は起こるか』（講談社、1988年）
『バイオ新素材のはなし』（日刊工業新聞、1996年）
『海からの地球大変革』（徳間書店、1997年）
『生命工学への招待』（朝倉書店、2002年）
『Biological Magnetic Materials and Applications』（Springer Nature, 2018年）

これらの著作は、専門家だけでなく一般の読者にも生物工学やマリンバイオテクノロジーの重要性や可能性を分かりやすく伝えています。

また、2007年には日本テレビ系の番組『世界一受けたい授業』に出演し、「海藻で車が走る！？海から生まれた驚異の発明！」というテーマで研究成果を紹介するなど、メディアを通じて科学技術への関心を高める活動も行っています。

まとめ

松永 是氏は、生物工学、特に生物磁石やマリンバイオテクノロジー研究の第一人者として、革新的な研究を推進しました。東京農工大学では、助教授、教授、学部長、理事・副学長、そして学長と段階を経て要職を歴任し、大学の発展に尽力しました。さらに、国内外の学会会長やJAMSTEC理事長として、学術振興、海洋研究開発、国立研究開発法人全体の運営にも貢献しており、日本の科学技術界において非常に重要な役割を果たし続けている人物です。

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