松浦斌

松浦斌について

松浦斌（まつうら さかる）は、1851年9月17日に隠岐国知夫郡西ノ島で生まれました。彼は焼火神社の神主として知られ、隠岐航路の開拓に尽力した人物です。斌は、神職としての責任を果たす傍ら、教育活動にも従事し、地域の発展に寄与しました。

幼少期と教育活動

斌は16歳で焼火権現の別当を引き継ぐと、1868年の神仏分離令を契機に神職へと転身しました。また、彼は山上に塾を設立し、学びの場を提供しました。1872年には、私宅を学校に提供したり、地域小学校に金銭を寄付するなど、教育の普及に努めました。また、斌は波止支校で教壇に立ち、若い世代の育成にも貢献しました。

航路開拓の背景

明治時代初頭、隠岐諸島と本土の移動は帆船に頼っていましたが、定期的な運航が難しく、天候による影響も頻繁でした。1877年には、隠岐で新聞の到着が1ヶ月遅れる事態が発生するなど、情報の流通が滞っていました。このような状況を打破するために、松浦斌は航路開発の必要性を痛感し、具体的な提案を行います。

航路開発への挑戦

斌は1883年、隠岐国四郡町村連合会の議員として、地方の蒸気船購入を提案しました。しかし、当初は資金面や漁業者の反対に直面し、計画は難航しました。しかし、彼の努力が実を結びました。隠岐四郡の初代郡長である高島士駿の支援を受け、最終的には島根県令が航路開発のための公費助成を提案します。

1884年には、隠岐国四郡町村連合会が蒸気船の購入に合意し、1884年末にはイギリス製の蒸気船「隠岐丸」が隠岐に入港しました。この船は非常に高額であったものの、斌は地域の発展を願い、約1万9000本の山林を担保に融資を受けました。

開航とその後

1885年2月、「隠岐航路」が西郷港、菱浦港、浦郷港、境港を結ぶ形で運航を開始しました。しかし、運航は厳しい経済状況に直面し、斌は多くの損失を抱えることになります。彼の健康状態も悪化し、1890年に38歳でその生涯を終えました。

斌の死後の影響

松浦斌が亡くなった後、隠岐航路は一時的に隠岐国四郡町村連合会によって運営されました。そして1895年には、隠岐汽船株式会社が設立され、航路の維持が続けられることとなります。現在、隠岐航路を運航するフェリーが焼火山付近を通過する際には、斌に対する敬意を表して汽笛を鳴らす慣習が残っています。

さらに、1990年代には、隠岐汽船の創立100周年を記念し、西ノ島町の別府港に斌の銅像が建立されるなど、彼の業績は今もなお地域の人々に称えられています。

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