松浦豊明

松浦豊明

松浦豊明（まつうら とよあき、1929年10月5日 - 2011年8月16日）は、昭和から平成にかけて活躍した日本の代表的なピアニストであり、教育者。上野学園大学名誉教授。

生涯とキャリア

大阪府豊中市に生まれた松浦は、8歳の時にピアノの世界へ足を踏み入れ、上野児童音楽学園にて永井進氏に師事した。その後、東京音楽学校（現在の東京芸術大学）ピアノ科に進学するも、学業の途中で退学している。

彼の才能は早くから頭角を現し、1948年には第17回日本音楽コンクールピアノ部門で、最も優秀な演奏家に贈られる第1位と特賞に輝き、将来を嘱望された。1950年には初のソロリサイタルを開催し、NHK交響楽団の定期演奏会にもソリストとして出演（プロコフィエフ作曲のピアノ協奏曲第3番を演奏）、プロフェッショナルとしてのキャリアを本格的にスタートさせた。

国際舞台での活躍は、1958年の第1回チャイコフスキー国際コンクールへの参加から始まる。この記念すべき大会で入賞（第7位）を果たしたことが契機となり、旧ソ連におけるメロディアレコードへの録音や、1960年、1962年に行われた旧ソ連主要都市での演奏旅行へと繋がった。

コンクールへの参加と並行して、1958年には国立ベルリン高等音楽院への留学を決意。ここではヘルムート・ロロフ氏に師事し、研鑽を積んだ。さらにイタリアやフランスにも渡り、ヴィルヘルム・ケンプ、アルトゥール・ルービンシュタイン、ナディア・ブーランジェといった錚々たる巨匠たちの教えを受けたことは、彼の芸術観に大きな影響を与えた。

翌1959年には、フランスで開催されたロン＝ティボー国際音楽コンクールに出場し、最高位である第1位グランプリを獲得。これは日本人として初の快挙であり、彼の名を世界的なものとした。

この成功を受け、1960年にはモナコ王立音楽祭への出演や、NHK交響楽団が行った世界一周演奏旅行のソリストとして、スイスのルツェルン音楽祭など、各地で演奏活動を行い、メディアへの露出も増えた。同年にはその功績が認められ、毎日芸術賞と大阪府民劇場賞を受賞している。1961年にはベルリン国立音楽大学での課程を修了し、シューベルト賞を受賞。また、ロン＝ティボー国際音楽コンクールの審査員にも招かれた。

1963年には、日本外務省によって初の西欧音楽使節に任命され、ニューヨークをはじめとする北米や南米各地で演奏活動を展開した。1969年に日本へ帰国するまで、彼はベルリンとハンブルクを拠点に、ヨーロッパ各地と日本を行き来しながら演奏活動を精力的に行った。

帰国後は、自身の演奏活動を続ける傍ら、後進の指導やメディアでの活動にも力を入れた。NHKの音楽番組で講師を務めたり、民放の音楽番組に数多く出演したりと、広くクラシック音楽の普及に貢献した。大学においては教鞭を執り、東京芸術大学、大阪音楽大学、上野学園大学、日本大学大学院芸術学研究所で教授を務めた。また、日本ピアノ教育連盟や日本ショパン協会の理事を歴任し、音楽界の発展に尽力した。

晩年もその情熱は衰えず、1998年にはパリ、ウィーン、ハンブルク、ベルリンといったヨーロッパ主要都市でリサイタルを開催。ベルリンでの公演はテレビ放映された。また、ローマのサンタ・チェチーリア音楽院大学では講義とリサイタルを行い、その功績に対して感謝状が授与された。

国際的な視野を持ち続けた彼は、1975年のロン＝ティボー国際音楽コンクールを皮切りに、ブゾーニ国際ピアノコンクール、日本国際音楽コンクールなど、多くの国際コンクールで審査員を務め、若手ピアニストの育成と評価に貢献した。

東京芸術大学在籍時の門下生には、後にピアニスターとして知られるHIROSHI氏がいる。

2011年8月16日、心不全のため81歳で死去。葬儀は近親者によって執り行われ、その訃報は同年10月22日に公にされた。

主なコンクール歴

1948年：日本音楽コンクール - 第1位、特賞
1958年：第1回チャイコフスキー国際コンクール - 入賞（第7位）
* 1959年：ロン＝ティボー国際コンクール - 第1位、グランプリ（日本人初）

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