松田茂役

松田茂役九段：酒を愛した実力派棋士の生涯

松田茂役九段（1921年6月28日 - 1988年8月2日）は、昭和から平成へと続く将棋界を彩った、個性豊かな棋士でした。鳥取県鳥取市に生まれ、1935年、金子金五郎九段に入門し、奨励会へ入会。1940年に四段に昇段後、着実に実力をつけ、1951年には八段に昇段、そして1981年には九段の称号を得ました。A級棋士として10期にわたって活躍した彼の棋歴は、まさに将棋界における一時代を築いたと言えるでしょう。

彼の棋風は、酒を愛する豪放磊落な性格を反映した、攻撃的なものでした。晩年は名前を「茂行」から「茂役」へと改名。その独特の個性を表すエピソードとして、升田幸三九段がA級棋士に向かって「君たちの将棋は松田君より大駒一枚弱い」と言ったという逸話が伝わっています。これは、松田九段の将棋の実力、そして持ち前の大胆さ、戦略眼の高さを示すものと言えるでしょう。

松田九段は、プロ棋士としての活動以外にも、アマチュア将棋界との交流にも深く関わっていました。特に、小池重明氏(後にプロ棋士)のプロ入りを後押ししたエピソードは有名です。小池氏がプロ入りを志願した際、松田九段は師匠役を買って出て、棋士会で彼のプロ入りを提案しましたが、残念ながら反対多数により実現しませんでした。このエピソードからも、彼の後進育成への熱意と、アマチュア将棋界への深い愛情がうかがえます。

また、松田九段は日本将棋連盟理事を長く務め、将棋界の発展に貢献しました。その功績は、単なる棋士としての活躍にとどまらず、組織運営にも大きく貢献したことを示しています。さらに、彼は詰将棋の名手としても知られており、その巧みな詰将棋の腕前は、多くの将棋ファンを魅了しました。

彼の戦績は輝かしいものでした。王座戦、早指し選手権戦での優勝、そして九段戦や王将戦への出場経験など、数々のタイトルを獲得、あるいは上位進出を果たしています。これらの実績は、彼の並外れた才能と、厳しい修練によって培われた実力を証明しています。

1985年、長年の棋士生活に幕を閉じ、引退。そして1988年、呼吸不全のため67歳で逝去しました。彼の死は、多くの将棋ファンに深い悲しみをもたらしました。しかし、松田茂役九段が残した功績と、その生き様は、これからも将棋界に語り継がれていくことでしょう。 その豪胆な棋風、そして温かい人柄は、多くの後輩棋士たちに大きな影響を与え、将棋界の発展に大きく貢献しました。彼の功績は、単なる棋士としての勝利の数だけでなく、後進育成への貢献、そして将棋界全体への貢献という、多面的な側面から評価されるべきでしょう。

松田九段の甥には、鳥取県在住のアマチュア強豪棋士である松田隆氏（「赤旗名人」などの称号を持つ）がおり、一家に将棋の才能が受け継がれていることがわかります。

彼の生涯は、まさに将棋一筋に生きた、情熱的で魅力的な棋士像を示すものです。 酒を愛し、豪快な性格で知られながらも、その実力は誰もが認めるところでした。その生き様は、現代の将棋界にも、多くの示唆を与えてくれるでしょう。

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