金子金五郎

金子金五郎：棋士、編集者、そして僧侶

金子金五郎（1902年～1990年）は、大正から昭和にかけて活躍した著名な将棋棋士です。九段の称号を持ち、土居市太郎という名棋士に師事しました。東京府（現在の東京都）出身で、棋士番号は3番。彼の生涯は、激動の将棋界の歴史と深く結びついています。

棋士としての歩み

1916年、金子金五郎は土居市太郎に入門。その後、将棋界分裂という大きな事件に巻き込まれます。1917年、「将棋同盟社」が分裂した際に、金子は土居派として残留。1920年には四段に昇段し、三派対抗戦に出場するなど、早くから頭角を現しました。1924年には三派が統合して東京将棋連盟が設立。金子もその発展に貢献していきます。1932年には八段に昇段しますが、ライバルであった木村義雄には実力差をつけられてしまう時期もありました。

1935年、実力制名人戦が始まると、挑戦者決定リーグに参加。しかし同年、神田辰之助の八段昇段を巡る「神田事件」により、棋界は再び分裂。金子は花田長太郎と共に連盟を離脱し、「革新協会」を結成します。この事件は、神田の八段昇段に関する密約が原因でした。金子は反対派との板挟みとなり、同情した棋士と共に革新協会を設立したのです。しかし、半年後には和解し、新たに設立された将棋大成会（日本将棋連盟の前身）に参加。その後も幹事長を務め、名人となった木村義雄を補佐して将棋界の発展に貢献しました。戦後、順位戦に3期参加した後、1950年に引退しました。引退後は日蓮宗の僧侶となり、法号を金子行秀と改めました。1973年には九段に昇段。1990年、88歳の誕生日を迎え、肺炎のため亡くなりました。

棋士以外での活動

金子金五郎は、棋士としての活動以外でも多方面で活躍しました。彼は「序盤の金子」と呼ばれた理論派棋士であり、引退後は観戦記者として大山康晴や升田幸三の名勝負を解説。その分かりやすい解説で多くのファンを魅了しました。「定跡とは、歴史です」という言葉は、彼の将棋観をよく表しています。

さらに、1937年に創刊された将棋雑誌「将棋世界」の初代編集長を務め、長年にわたり「近代将棋」で「金子教室」を連載するなど、将棋界の発展に貢献しました。

人となり

金子金五郎は、山田道美を内弟子として指導したこともあります。彼の娘は将棋の観戦記者でありチェスプレーヤーである東公平と結婚しましたが、後に離婚しています。

まとめ

金子金五郎は、棋士としてだけでなく、編集者、観戦記者、僧侶として、多様な顔を持つ人物でした。激動の時代を生き抜き、将棋界に多大な貢献をした彼の生涯は、後世に語り継がれるべきものです。彼の功績は、将棋界の歴史に大きな足跡を残しています。彼の著書や、彼に関する参考文献を読むことで、その生涯をより深く理解することができるでしょう。

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