松面古墳

松面古墳と塚の腰古墳

概要

松面古墳は、千葉県木更津市朝日に位置していた方墳です。この古墳は、祇園・長須賀古墳群を構成する一つであり、小櫃川下流域の沖積地に築造された大型の方墳でした。現在では墳丘は失われていますが、過去の発掘調査によってその姿が明らかになっています。松面古墳の南には、大溝を挟んで塚の腰古墳が存在していました。

松面古墳の詳細

松面古墳は、東西約44.2メートル、南北約45.3メートルの方形墳で、千葉県内では3番目の規模を誇ります。墳丘の周囲には周溝と外周溝が巡らされており、その規模は周溝を含めると約69.5メートル、外周溝を含めると約84.5メートルにも及びます。周溝からは、木製の鋤先や柄、杭、修羅、刀形などが出土しており、特に修羅は石材運搬に使われたもので、国内で2例目の発見として注目されています。埋葬施設は両袖式の横穴式石室で、軟質砂岩の切石が使用され、床面には板石が敷かれていました。

1938年の発掘調査では、石室内から装飾付大刀、武器、装飾品、馬具、須恵器、土師器など多数の副葬品が出土しました。これらの出土品は、古墳時代終末期の7世紀初頭頃に築造されたことを示唆しています。松面古墳は、祇園・長須賀古墳群において金鈴塚古墳に後続し、塚の腰古墳に先行する首長墓と考えられており、房総地方における終末期古墳の代表例として重要視されています。

遺跡の歴史

松面古墳は、1938年に旧君津病院建設に伴う緊急調査が行われました。その後、2005年、2010年、2014年度にも発掘調査が実施され、詳細な情報が収集されています。発掘された出土品は、東京国立博物館や國學院大學博物館に保管されています。

松面古墳の主な出土品（1938年発掘）

装飾大刀
金銅装双龍環頭大刀
銀装捩環頭大刀柄頭
金銅製鞘飾金具残片
武器
直刀
鉄鉾身・石突
銀製弭
鉄鏃
装飾品
金銅製双魚佩
金銅製ガラス玉付木葉形腰佩
金銅製方形花形飾金具
ガラス小玉
馬具
金銅製鉸具付心葉形杏葉
金銅装鞍磯金具
金銅製覆輪残片
鉄製壺鐙残欠
鉄地金銅張革留金具
その他
銅椀
須恵器（坏蓋、坏身、有蓋高坏、高坏蓋、無蓋高坏、脚付長頸壺、長頸壺蓋、脚付坩片、甕など）
土師器（坏、甕など）

塚の腰古墳の詳細

塚の腰古墳は、松面古墳の南に位置する方墳で、同じく祇園・長須賀古墳群を構成しています。松面古墳と同様に、墳丘は失われていますが、過去の発掘調査により、その形状や規模が明らかになっています。

墳形は一辺約39.5メートルの方形で、周囲には周溝と外周溝が巡らされていました。周溝を含めた規模は約61.0メートル、外周溝を含めた規模は約73.5メートルです。埋葬施設は失われているため不明ですが、1909年の発掘調査では、銅鏡、直刀、鉄鏃、馬具、須恵器などが出土しました。築造時期は、古墳時代終末期の7世紀前半頃と推定され、松面古墳に後続する首長墓と考えられています。

塚の腰古墳の主な出土品（1909年発掘）

仿製四獣鏡
金銅製鞍磯金具
直刀
琥珀玉
ガラス小玉
須恵器（長頸壺）
鉄鏃

関連施設

木更津市郷土博物館金のすず：塚の腰古墳の出土品を保管。
東京国立博物館：松面古墳の出土品を保管。
國學院大學博物館：松面古墳の出土品を保管（常設展示なし）。

これらの古墳は、房総地方の古墳文化を理解する上で重要な遺跡であり、出土品は当時の社会や文化を研究する上で貴重な資料となっています。

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