起請文

起請文（きしょうもん）とは

起請文とは、日本において、契約や約束を交わす際に、その内容を神仏に誓約する文書のことです。単に「起請」とも呼ばれます。契約を破った場合には神仏による罰を受けるという内容が記されており、その効力は非常に重く考えられていました。

起請文の構成

起請文は、主に以下の3つの部分から構成されます。

1. 前書（ぜんしょ）：契約や約束の内容を具体的に記述します。
2. 神文（しんもん）：契約者が信仰する神仏の名前を列挙します。
3. 罰文（ばつぶん）：契約を破った場合に受ける神仏の罰について記述します。

起請文の歴史

起請文は、鎌倉時代後期ごろから、各地の社寺で頒布される牛王宝印（ごおうほういん）の裏に書かれるのが一般的になりました。牛王宝印は、特に熊野三山のものがよく用いられ、熊野の牛王宝印に書かれた起請文の約束を破ると、熊野の神使であるカラスが3羽死に地獄に堕ちると信じられていました。

戦国時代には、大名同士の同盟や和睦の際にも、相互の信頼を確認するために起請文が交わされました。

南蛮誓詞

江戸時代には、幕府のキリスト教禁止令の下で、棄教したキリシタン（転びキリシタン）に、日本の神仏に対する起請文（日本誓詞）だけでなく、キリスト教の神（デウス）や天使、聖人に対して棄教を誓う起請文（南蛮誓詞）が書かれました。南蛮誓詞は、踏み絵よりも重要視され、棄教の意思を確認する手段として用いられました。

起請文に関する考察

天照大神：西日本では起請文に天照大神が書かれることが一般的でしたが、中世東国では稀でした。この理由として、天照大神が「虚言をおっしゃる神」であると考えられていたことが挙げられています。
武士道：起請文が必ずしも守られるものではないという認識も存在しました。武士の中には、自身の言葉を何よりも重んじ、神仏の誓いを必要としないという考えを持つ者もいました。

起請文の現代における意義

起請文は、現代ではあまり見られなくなりましたが、日本人の契約や約束に対する考え方を理解する上で重要な歴史的資料です。

参考資料

佐藤弘夫『起請文の精神史-中世世界の神と仏』（講談社選書メチエ、2006年）
三枚起請 - 落語。起請文に嘘を書くと熊野の烏が3羽死ぬという内容
熊野牛王符

外部リンク

「中・近世の護符・起請文の研究」調査（國學院大學　21世紀COEプログラム『神道と日本文化の国学的研究発信の拠点形成』）
いろいろな起請文
三熊野の起請文（神坂次郎）（神坂次郎の紀伊半島再発見）
一枚起請文（『浄土真宗聖典（註釈版）』所収）
北条氏康の起請文（関宿城博物館）
* Kishōmon: Four oaths and five invocations プリンストン大学

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