板坂則子

板坂則子氏は、近世文学、とりわけ曲亭馬琴の作品研究において第一人者として広く知られる著名な研究者です。1952年3月、東京都に生まれ、女子学院高等学校、お茶の水女子大学文教育学部国文科を卒業後、東京大学大学院人文科学研究科博士課程に進学。同課程を単位取得満期退学後、群馬大学教育学部専任講師、助教授を経て、1992年より専修大学で助教授、教授を務められました。2022年に専修大学を定年退職、名誉教授の称号を授与されています。

その専門は近世戯作、中でも曲亭馬琴の作品に関する研究が中心です。数多くの論文を発表し、2010年には『曲亭馬琴の世界 戯作とその周縁』で博士（文学）の学位を取得。実証に基づいた厳格な研究姿勢で知られ、近世戯作研究に多大な貢献を果たしています。代表的な著書として、『曲亭馬琴の世界 戯作とその周縁』（笠間書院、2010年）、『江戸時代　恋愛事情』（朝日選書、2017年）などが挙げられます。これらの著作は、近世文学、特に近世戯作の面白さを一般読者にも分かりやすく伝えることを目指し、高い評価を得ています。

学術研究活動に加え、板坂氏は教育者としても大きな実績を残しています。専修大学教授時代には、多くの学生を指導。その指導スタイルは、単なる知識の伝授にとどまらず、学生と共に創造的な活動に取り組むことを重視するものでした。例えば、学生たちと協力してオペラ『八犬伝』の台本を制作し、実際に上演するなど、実践的な学びの場を提供。また、『狭衣物語』を題材とした二次創作ゲーム「狭衣」の制作にも携わっており、従来の学問分野にとらわれない、柔軟で独創的な教育アプローチを実践してきたことが分かります。さらに、海外大学との共同授業や遠隔授業にも積極的に取り組むなど、国際的な視野を持つ人材育成にも尽力。その指導を受けた学生の中には、フジテレビプロデューサーの坪井貴史氏など、各界で活躍する人材も輩出しています。

編著・校訂においても、多くの業績を残しています。『馬琴草双紙集』（叢書江戸文庫、国書刊行会、1994年）、『椿説弓張月 前編』（笠間書院、1996年）、『馬琴（日本文学研究論文集成）』（若草書房、2000年）など、貴重な史料の整理・解説を通して、近世文学研究に貢献しています。これらの活動は、板坂氏の学問に対する深い愛情と、後世への貢献という強い意志の表れと言えるでしょう。

このように、板坂則子氏は、近世戯作研究における第一人者として、実証的な研究活動と、学生と共に創造的な活動を展開する教育者としての両面で、高い評価を得ています。その功績は、近世文学研究のみならず、日本の学術界全体に大きな影響を与え続けていると言えるでしょう。現在も精力的に研究活動を続け、後進の育成に尽力されています。

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