林 (高松市)

香川県高松市の東部に広がる林（はやし）地区は、上林町、林町、六条町の3町から構成されています。かつては木田郡林村として独立していましたが、1956年9月30日に高松市に編入され、その一部となりました。

地理的には、高松市中心部から少し離れた郊外に位置し、ほぼ正方形に近い形をしています。地区全域が高松平野の一部であるため、大きな山はありませんが、扇状地の特性から南部に向かうほど緩やかに標高が高くなります。河川としては、地区の東側を流れる春日川や古川があります。讃岐平野に特徴的ないため池は、地区の中心部には少なく、北端や西端に集まって見られます。

人口は、2010年時点でおよそ1万人、世帯数は約4,200世帯でした。高松市の他地区と比較して特に多いわけではありませんが、注目すべきはその人口増加率です。特に2000年代からの10年間で人口が約2倍となり、高松市を構成する地区の中で最も高い増加率を記録しました。これは、同時期に進められた様々な開発による影響が大きいと考えられます。

土地利用は、かつての稲作を中心とした田園風景から大きく変化しました。特に2000年代以降、地区北西部での太田第2土地区画整理事業、国道11号高松東バイパスや県道43号中徳三谷高松線といった幹線道路の開通、そして高松自動車道の高松中央インターチェンジ供用開始など、交通アクセスの飛躍的な向上に伴い、幹線道路沿いにはロードサイド型の商業施設が次々と立地しました。
また、これまで市街化調整区域として開発が制限されていた地域も、2004年の線引き撤廃以降、農地から宅地への転用が進み、高松市中心部のベッドタウンとして急速に住宅地が拡大しました。これにより人口が急増しましたが、同時にインフラ整備が追いつかず、無秩序な開発（スプロール化）やそれに伴う地盤沈下といった課題も懸念されています。

経済構造を見ると、2005年のデータでは、高松市の平均と比べて第一次産業（農業）と第二次産業（製造業など）に従事する人の割合がやや高く、第三次産業（商業、サービス業など）の割合がやや低い傾向にありました。農業は稲作が中心ですが、宅地化の進行により農地は減少傾向です。第二次産業は大規模な集積地はありませんが、香川インテリジェントパーク周辺に軽工業系の工場が見られます。第三次産業の中心は、幹線道路沿いのロードサイド店舗と、旧高松空港跡地に整備された香川インテリジェントパーク内の産業支援施設や研究機関です。インテリジェントパークには、香川県立図書館・文書館、サンメッセ香川、香川大学工学部キャンパスなど、教育・研究・産業支援の中核施設が集まっています。

教育環境としては、地区内に高松市立林小学校があります。中学校は地区外となり、主に高松市立協和中学校、一部が高松市立龍雲中学校の校区です。高等教育機関として香川大学林町キャンパス（工学部）が立地しています。また、小学校や大学周辺には複数の幼稚園や保育施設が整備されています。

行政サービスは、高松市林出張所が住民サービスや地域交流・生涯学習の拠点（林コミュニティセンター兼務）として機能しています。警察は隣接する多肥地区の高松南警察署、消防も同地区の南消防署の管轄です。

交通網は発達しており、道路では高松自動車道の高松中央インターチェンジが地区内にあり、高速交通の要衝となっています。その他、国道11号高松東バイパス、県道10号高松長尾大内線（さぬき東街道）、県道43号中徳三谷高松線など主要な幹線道路が縦横に走り、利便性の高い地域です。鉄道はことでん長尾線が地区北東部をかすめて通りますが、地区内に駅はありません。最寄り駅は元山駅や水田駅ですが、利用できるのは地区のごく一部に限られます。バス路線はことでんバスが地区内を広くカバーしており、高松駅方面や伏石駅方面への路線が運行されています。また、高松中央インター付近には高速バス停留所もあり、県外へのアクセスも良好です。

歴史を見ると、1989年まで旧高松空港が存在し、「林の飛行場」として親しまれていました。新空港開港に伴い廃止された跡地は、現在のような香川インテリジェントパークとして整備が進められました。古くは弥生時代の遺跡や中世の城跡も見られますが、多くは開発により遺構は失われています。

林地区は、交通インフラの整備とそれに続く開発によって、かつての農村から人口増加著しい郊外の住宅・産業集積地へと大きく変貌を遂げた地域と言えます。

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