林万青

林万青（りん ばんせい、Lin Wanqing、生年不詳 - 1858年）は、清朝末期に発生した紅銭会の乱における重要な指導者の一人です。彼の生涯は、当時の社会不安と反政府運動の激しさを物語っています。

福建省永春県の出身である林万青は、もともと武術に秀でた武生でした。しかし、彼は秘密結社である天地会の一派、紅銭会に身を投じます。1853年、黄徳美が率いる小刀会が海澄で蜂起すると、林万青もまた紅銭会を率いて立ち上がりました。彼の指揮の下、紅銭会は永春、徳化、大田、竜渓、永福、仙游といった地域を次々と占領し、その勢力を拡大しました。

しかし、小刀会が廈門での戦いに敗れると、林万青は撤退を余儀なくされます。彼は太平天国と連携し、1855年に太平天国が江西省に進出すると、林万青は太平天国から職位を授かり、福建省西部で太平天国軍を迎え入れる準備を整えました。1857年、太平天国軍が江西省から福建省に侵攻すると、林万青は会党を集結させて呼応し、福建省西部を席巻しました。この時、彼の勢いは頂点に達したと言えるでしょう。

しかし、太平天国軍が江西省で危機に直面し撤退を余儀なくされると、林万青も占領地を放棄し、山岳地帯へと撤退しました。彼の勢力は一時的に衰退しましたが、その反骨精神は衰えることはありませんでした。1858年、楊輔清が率いる太平天国軍が再び福建省に侵入すると、林万青は再び立ち上がり、これに呼応しました。しかし、同年、彼は戦場で命を落としました。

林万青の生涯は、清朝末期の社会情勢と深く結びついています。彼は、腐敗した政治に対する民衆の不満を背景に、紅銭会の指導者として立ち上がり、一時は福建省西部を席巻するほどの勢力となりました。彼の行動は、太平天国との連携を通じて、より大きな反政府運動の一部となりましたが、最終的には志半ばで命を落としました。彼の短い生涯は、動乱の時代を生き抜いた人々の苦悩と希望を象徴していると言えるでしょう。

参考文献
羅爾綱『太平天国史』中華書局

もう一度検索