林本源園邸

板橋林家花園：歴史と文化が息づく台湾の名園

板橋林家花園、正式には林本源園邸（りんほんげんえんてい）は、台湾新北市板橋区に位置する、板橋林家によって造営された庭園と邸宅の複合施設です。この場所は、単なる庭園以上の意味を持ち、台湾の歴史、文化、そして豪族の隆盛を今に伝える貴重な遺産となっています。

歴史的背景

18世紀後半、中国福建省から台湾に渡った林應寅を始祖とする板橋林家は、米の貿易で巨万の富を築き、台湾有数の豪族へと成長しました。その財力を背景に、小作料の集積拠点として板橋に弼益館（ひつえきかん）を設け、後にそれを邸宅へと発展させました。林国華と林国芳兄弟がその拡張に尽力し、三落大厝（さんらくだいせき）や五落大厝（ごらくだいせき）といった壮大な邸宅群を築き上げました。

特に注目すべきは、庭園の造成です。中国蘇州の留園を模倣したというこの庭園は、来青閣（らいせいかく）、月波水榭（げつはすいしゃ）、定静堂（ていせいどう）などの建築物と人工の山水が巧みに組み合わされ、訪れる人々を魅了してきました。

庭園の構成

板橋林家花園の庭園部は約12,000平方メートルに及び、その中には以下のような多くの見どころがあります。

来青閣（らいせいかく）: 2階建ての建物で、かつては来賓の接待や宿泊に用いられました。豪華な装飾が施され、「繍楼」、「梳粧楼」とも呼ばれていました。
月波水榭（げつはすいしゃ）: 池に面した展望台で、水面に映る月を愛でるのに最適な場所として名付けられました。
定静堂（ていせいどう）: 園内で最も広い建築物で、大規模な宴会に使われました。中庭を備えた四合院形式で、美しい透かし窓が特徴的です。
方鑑斎（ほうかんさい）: 読書室として使われた場所で、池に面した舞台が設けられています。文人墨客が集い、詩を吟じた場所でもあります。
汲古書屋（きゅうこしょおく）: 林家の蔵書楼で、多くの貴重な書物を所蔵していました。
観稼楼（かんかろう）: 二層構造の建物で、遠くの観音山や田畑を眺めるのに使われました。初期に建てられた建物で、庭園の中でも重要な位置を占めていました。
* 榕蔭大池（よういんだいち）: 園内最大の池で、ガジュマルの老木が植えられています。築山や東屋が配置され、変化に富んだ景観を作り出しています。

近代以降の変遷

日本統治時代には、板橋林家花園は皇族や政府高官の接待場所として使われました。台湾博覧会では、郷土館として利用されたこともあります。

第二次世界大戦後には、国共内戦による難民が一時的に住み着き、荒廃が進みました。しかし、地元住民や政府関係者による保存運動により、大規模な修復事業が行われ、現在の美しい姿を取り戻しました。1986年には第一次修復事業が完了し、一般公開されるようになりました。

現在の板橋林家花園

現在、板橋林家花園は新北市政府文化局の管理下にあり、一般公開されています。庭園はいつでも見学できますが、邸宅部分である三落大厝は、板橋林家ファミリー企業の「祭祀公業林本源」が管理しており、専属ガイドによるツアーのみで見学可能です。その歴史的価値と美しい景観から、国内外の多くの観光客が訪れる人気のスポットとなっています。

アクセス

板橋林家花園へは、台湾鉄道または高速鉄道の板橋駅から、バスまたは徒歩でアクセスできます。台北捷運（MRT）板南線の府中駅からも徒歩圏内です。また、公共レンタサイクルYouBikeも利用可能です。

板橋林家花園は、単なる歴史的建造物以上の価値を持っています。それは、台湾の歴史と文化を今に伝える生きた遺産であり、訪れる人々を過去への旅へと誘う魅力的な場所です。この地を訪れることで、台湾の歴史と文化への理解を深め、素晴らしい体験ができるでしょう。

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