林皇后

林皇后（生年不詳 - 483年）は、北魏の孝文帝の貴人（側室）であり、皇子元恂の生母として知られています。彼女の生涯は、北魏の宮廷における権力闘争と、皇位継承に関わる独特な制度によって大きく左右されました。

生い立ちと宮廷入り

林皇后は、林勝の娘として生まれました。彼女の叔父である林金閭は、常太后に見出され、その才能を認められて平涼公の爵位を与えられました。この功績により、父である林勝も平涼郡太守に任じられました。しかし、460年（和平元年）に林金閭が乙渾によって暗殺されるという不幸に見舞われます。この事件に連座し、林勝も処刑され、林氏と彼女の姉は罪人として後宮に送られることとなりました。

孝文帝の寵愛と皇子出産

後宮に入った林氏は、その美貌によって孝文帝の寵愛を受けるようになります。483年（太和7年）には、皇子元恂を出産しました。元恂は聡明で、孝文帝の後継者として定められます。しかし、皇子が後継者に定められた場合、その生母は殺害されるという北魏の残酷な旧制（子貴母死）が存在しました。

「子貴母死」と死後の名誉

元恂が皇太子となると、林氏はその旧制に従って自害を命じられました。彼女は貞皇后という諡号を与えられ、金陵に手厚く葬られました。しかし、497年（太和21年）に元恂が反乱を企てたとして死を賜ると、生母である林氏もその罪に連座し、追って皇后の位を剥奪され、庶人に落とされました。

林皇后の生涯は、美貌と寵愛に恵まれながらも、宮廷の権力闘争と残酷な制度によって翻弄された悲劇的なものでした。彼女の運命は、北魏の歴史における宮廷の暗部を映し出すものとして、後世に語り継がれています。

参考文献

『魏書』巻13 列伝第1
『北史』巻13 列伝第1

もう一度検索