元恂

元恂（げん じゅん）：北魏、孝文帝の皇太子、その栄光と悲劇

元恂（483年 - 497年）は、北魏の第6代皇帝、孝文帝の長子として生まれました。字は元道、後に宣道と改められました。生母は貞皇后林氏です。

生い立ちと皇太子時代

483年、元恂は生を受けますが、当時の北魏の慣例「子貴母死」により、生母である林氏は死を賜りました。そのため、元恂は文明太后によって養育されることになります。493年、11歳という若さで皇太子に立てられ、将来を嘱望されました。

洛陽遷都と元恂の反発

孝文帝が南朝斉への遠征を計画した際、元恂は新都洛陽の留守を任されます。しかし、元恂は洛陽の暑さを嫌い、北方への郷愁を募らせました。また、鮮卑族の伝統である胡服の着用を巡り、高道悦から度々諫められたため、彼を憎むようになります。

平城への逃亡と高道悦の殺害

496年、元恂はついに平城へ逃亡し、高道悦を禁中に呼び出して自ら殺害するという暴挙に出ます。この事態に驚いた孝文帝は、遠征先から急遽引き返し、元恂を捕らえてその罪を糾弾しました。咸陽王元禧が元恂に杖刑を与え、彼は城西別館に拘禁される身となります。孝文帝は群臣を清徽堂に召し出し、元恂の廃位について議論させました。太子の教育係であった穆亮や李沖は責任を感じて謝罪し、孝文帝も「大義親を滅す」という言葉を引き合いに出し、元恂の皇太子廃位を決定、庶民に落としました。

賜死

孝文帝が長安へ行幸した際、中尉の李彪から元恂が謀反を企てているとの報告が上がります。孝文帝は咸陽王元禧と邢巒を派遣し、元恂は河陽にて毒殺（賜死）されました。享年15歳という短い生涯でした。

家族

婚約者：馮氏（馮誕の長女）
側室：左孺子劉氏、右孺子鄭氏

史料

『魏書』巻22補 列伝第10
『北史』巻19 列伝第7

元恂の生涯は、孝文帝による漢化政策が進められる中で、伝統的な価値観を持つ皇族との軋轢、そして皇位継承を巡る権力闘争の激しさを物語っています。

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