林道義

林道義氏(1937年生まれ)は、日本の経済学者、心理学研究者、そして評論家として知られる著名な人物です。その学究的な経歴は、東京大学法学部での学生時代から始まります。1958年から1961年にかけては、学生運動に身を投じ、全学連組織部長として60年安保闘争に参加するなど、激動の時代を生き抜きました。

東京大学卒業後は、同大学大学院経済学研究科に進学。大塚久雄教授の指導の下、経済学の研鑽を積みました。1968年に博士課程単位取得満期退学後、東京女子大学専任講師に就任。1971年には、マックス・ウェーバーをテーマとした学位論文『ウェーバー社会学の方法と構想』により経済学博士号を取得しました。

その後、1975年から1976年にかけてはドイツ・テュービンゲン大学に留学し、学問の幅を広げました。帰国後、研究分野を転換し、カール・グスタフ・ユングの深層心理学に傾倒。ユングの著作の翻訳にも携わるなど、ユング心理学研究に多大な貢献をしました。さらに、1988年から1989年にはスイス・チューリッヒのユング研究所に留学し、ユング心理学に関する研究を深めました。東京女子大学では助教授、教授として教鞭をとり、2007年に定年退職しました。

林道義氏の研究は多岐に渡ります。経済学のバックグラウンドを活かしつつ、ユング心理学を基軸とした独自の視点から、現代社会の様々な問題を考察しました。特に1996年の『父性の復権』以降は、父権論の立場からフェミニズムを批判する立場を明確に示し、『フェミニズムの害毒』(1999)など多くの著作を発表しました。これらの著作は、しばしば物議を醸し、フェミニストとの間で激しい論争を巻き起こしました。

心理学研究者としての活動も目覚ましく、宗教団体生長の家の機関誌『光の泉』などにも寄稿しています。また、林道義氏は囲碁を趣味としており、その深層心理的な側面に着目した著作も多数発表しています。自身の哲学の授業で学生に囲碁を教え、実際に打たせるなど、ユニークな教育方法も実践していました。

個人的なエピソードとして、林道義氏は夫婦ともにフェミニストとして事実婚を経験したのち、子供への影響を考慮し、婚姻届を提出したという経緯があります。また、弟である林紘義氏は、労働運動に身を投じた人物であり、思想信条においては兄弟間で対照的な立場をとっていました。

林道義氏は、経済学、心理学、そして評論という異なる分野を縦横に渡り歩き、独自の視点と深い洞察に基づいた数々の著作を残しました。その著作は、現代社会の様々な問題を提起し、多くの読者に影響を与え続けています。彼の研究と著作は、今もなお、多くの議論と考察の対象となっています。多様な分野での活躍と、時として激しい論争を巻き起こす発言は、林道義氏という人物像を際立たせる要素となっています。

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