大塚久雄

大塚 久雄の業績と経歴

大塚久雄（おおつか ひさお、1907年5月3日 - 1996年7月9日）は、日本の著名な経済史学者であり、東京大学の名誉教授です。彼の研究は主に英国経済史に焦点を当てており、近代資本主義や近代市民社会の発展についての考察で知られています。大塚は、マックス・ウェーバーの社会学やカール・マルクスの唯物史観を基盤とする独自の視点をもち、彼の理論体系は「大塚史学」として評価され、多くの国際的な注目を集めました。

生い立ちと教育

大塚は京都府に生まれ、京都府立京都第一中学校を卒業後、旧制第三高等学校に進学しましたが、片足を負傷し、後に切断を余儀なくされました。1930年には東京帝国大学経済学部を卒業し、在学中に本位田祥男や内村鑑三に学びました。その後、法政大学や東京帝大での教職を経て、1947年から東京大学教授として勤めました。1968年に名誉教授となり、学士院会員や文化功労者、文化勲章など数々の栄誉を受けました。

研究成果

大塚の研究は、近代における人間の役割について深入りしており、特にイギリスを近代と民主主義の理想のモデルと位置づけ、独立した自営農民であるヨーマンがその発展を支えたと考えました。また、彼の思考は日本の民主主義に対する反省が背景にあり、太平洋戦争時の過剰な統制や神かがり主義への批判を反映しています。このような視点から、大塚は「労働者の自発性と目的合理性」を重視し、その結果、彼の学問は時代に強い影響を与えました。

しかし、経済が高度成長に向かう中で、イギリス製造業の陰りが見え始めると、大塚の主張や思想は次第に受け入れられなくなり、求心力を失っていくこととなります。

主要著作

大塚は多くの著作を残しており、彼の重要な単著としては『株式会社発生史論』『近代資本主義の系譜』『社会科学の方法』などが挙げられます。特に彼の学術的な視点を示す著作は、経済学や社会学の分野で広く読まれています。また、彼は翻訳者としても活躍し、ヴェーバーやピレンヌの重要な著作を日本に紹介しました。

大塚久雄の研究は、単に歴史的な背景を考察するだけでなく、現代社会における人間の位置づけや役割についても深く考える機会を提供し、多くの学者や学生に影響を与え続けています。彼の理論や洞察は、今もなお経済学や社会科学の基礎に根付いており、その業績は高く評価されています。彼は1996年、東京都練馬区の自宅で老衰により亡くなり、彼の蔵書は福島大学付属図書館に「大塚久雄文庫」として保存されています。

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