林達夫

林達夫について

林達夫（はやし たつお、1896年11月20日 - 1984年4月25日）は、日本を代表する思想家であり批評家として知られています。彼の著作は主に西洋の精神史、文化史、文明史に関わるものであり、その内容は多岐にわたります。

経歴

林達夫は1896年、東京で生まれました。彼の父、曾登吉は外交官で、アメリカ・シアトルの領事館へ赴任していたため、林は幼少期の2年間をシアトルで過ごしました。帰国後、福井市の親戚に預けられ親友との険悪な関係や、周囲からの偏見に直面します。その後、京都市立錦林小学校を経て、京都府立第一中学校へ進学。青春期には演劇や音楽に夢中となり教育機関を中退。1919年には京都帝国大学文学部哲学科に入学し、美学および美術史を専攻。卒業後は東洋大学や津田塾大学、法政大学などで教鞭を執りながら哲学や西洋文化に関する研究を深めました。

1930年代は、有名な雑誌「思想」の編集に加わり、フランス古典文学の研究や翻訳に力を入れていました。特に「百科全書派」としてフランス語学の研究に秀でており、多くの誤訳を指摘し、改訳版の出版に結びつけました。

また、1931年にはソヴェート友の会を結成し、共産主義に対する自身の批判を強めました。彼は戦時中も文化人のサポートに尽力し、湘南文庫の設立や自由大学の開催に関わりました。1945年の戦後、明治大学の教授として教鞭を取って活躍し、また平凡社にて『児童百科事典』や『哲学辞典』の編集にも携わりました。1954年には『世界大百科事典』の編集を手がけ、その後も多岐にわたる著作を発表しました。

彼の著名な著作には、『文藝復興』や『ルソー』、『歴史の暮方』などがあり、西洋思想や哲学に対する深い洞察を提供しています。特に、共産主義に対する見解は彼の活動の中心となり、形成された社会に対する批判的な目線を持つことが彼の特徴的なスタンスでした。

1973年、長年の業績が評価され、朝日文化賞を受賞。高名な思想家や作家たちにも影響を与え、師事した弟子たちは数多くいます。その後、1984年に藤沢市で亡くなるまで、西洋精神史の研究を続け、数多くの訳書や評論を残しました。

家族・親族

林達夫は、妻の高瀬芳との間に二人の子供をもうけました。長男の林巳奈夫は著名な中国考古学者として京都大学の教授を務め、次男の林杲之介は図書館学者として知られています。弟も軍人として活動した経歴があります。

著作と翻訳

達夫は「書かざる学者」と称される一方で、数多くの優れた著書を手がけ、また翻訳者としてもファーブルの『昆虫記』などの名著を訳しました。さらに、彼の著作は現代思想においても重要な位置を占めており、その影響は今も感じられます。彼の蔵書は明治大学に所蔵されており、1991年にはその目録が発行されました。

その生涯を通じ、林達夫は日本の思想界に多大な影響を及ぼした人物となり、彼の思想は今後も語り継がれていくことでしょう。

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