果実を採る少年たち

『果実を採る少年たち』の背景と芸術的価値

『果実を採る少年たち』は、スペインの著名な画家フランシスコ・デ・ゴヤが1778年に制作した油彩画であり、マドリードのプラド美術館に所蔵されています。この作品は、エル・パルド王宮のために作成されたタピスリー用のカルトンの一部であり、当時のスペインの風俗を描いた作品の中でも特に注目されています。ゴヤはこの作品を通じて、子供たちの日常的な遊びを生き生きと表現し、当時の社会や文化を映し出しています。

制作背景

エル・パルド王宮は、スペインの王族が夏の間に使用していた離宮です。この宮殿での装飾プロジェクトにおいて、ゴヤは1776年から1778年の期間に、王太子夫妻のためにタピスリーのカルトンを制作する任を担っていました。従来のタピスリーは神話や歴史を題材としていたのに対し、ゴヤは当時の人々の生活を風俗画として描く道を選びました。これにより、絵画『果実を採る少年たち』を含む10点の作品が生まれました。それぞれが「田舎」をテーマにしており、ゴヤ自身がそれぞれの作品の構図を手掛けています。

絵画の詳細

本作品では、4人の少年が木に成っている果実を摘む姿が描かれています。一人の少年は四つん這いになった別の少年の背中に乗っており、木の枝をつかんで果実を揺らしています。さらに、他の少年はその様子を下から見上げており、帽子をかざして果物が落ちてくるのを待っています。

この描写には、スペインのバロック絵画の影響が色濃く表れ、特に果物を楽しむ子供たちを描いたバルトロメ・エステバン・ムリーリョとの関連が指摘されています。また、作品の空間配置は、ゴヤの別の作品『日傘』と類似点が見られ、前景には木に登る少年、後景には他の少年が描かれることで、視覚的に豊かな構成となっています。

作品の意義

『果実を採る少年たち』は、視覚的な楽しさだけでなく、当時の若者たちが持つ遊び心や短絡的な欲望をも表現しています。この子供たちの姿は、遊びを通して瞬間的な楽しみを追求する人々を表現しており、作品同士のテーマや構成には多くの共通点が見られます。

作品の歴史

この作品は、1778年の初頭にマドリードのサンタ・バルバラ王立タペストリー工場に納品され、その価格は1500レアルと定められました。後に、1856年から1857年にかけてマドリードの王宮へ移され、最終的にはプラド美術館に収蔵されることとなります。これにより、今日でも多くの人々がこの作品に触れることができるようになっています。

結論

『果実を採る少年たち』は、単なる子供たちの遊びを描いた作品に留まらず、当時の社会や文化を映し出す重要な風俗画であり、ゴヤの芸術的な才能を示す一例でもあります。この作品が持つ価値は、今日に至るまで多くの観賞者に感動を与え続けています。

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