柏子所貝塚

柏子所貝塚（かしこどころかいづか）

柏子所貝塚は、秋田県能代市字柏子所にある縄文時代晩期前半の貝塚です。日本海から約3キロメートル、米代川下流の能代平野に位置する浅内台地の北端に位置しています。1955年1月に秋田県の史跡に指定されました。

発見と発掘調査

この貝塚は、1954年に郷土史家の秋元利吉によって発見されました。その後、1955年から1958年にかけて3回にわたる発掘調査が行われました。調査の結果、土壙墓から屈葬された人骨が発見され、そのうち5体は頭部にベンガラ（赤色顔料）が塗られていました。また、人骨の中には、呪術的な理由と思われる頭部に穴が開けられたものや、新生児と思われる人骨の手首に貝輪が装着されたものもありました。

出土品

貝塚からは、縄文時代の土器や石鏃、石匙などの石器、多数の骨角器、そして1270点にも及ぶ貝製品が出土しました。特に大量の貝輪と骨製品、性別の判明する全身の人骨は、秋田県内の縄文時代の遺跡としては非常に貴重な発見とされています。出土した骨角製品および貝製品は、1998年3月に秋田県指定有形文化財（考古資料）に指定されました。

人骨

発掘された人骨は、男女と子供合わせて8体で、7基の土壙墓に屈葬されていました。そのうち5体の頭部には、赤色塗料であるベンガラが塗られていました。2体には呪術的な理由とみられる頭部への穴があり、新生児とみられる人骨は右手首に5個の貝輪を装着していました。

装飾品

サルボウ、ベイケイガイ、カキなどの貝で作られた1270点もの貝輪が発見されました。紐でまとめられた作りかけの貝輪や、貝を加工するのに使ったとみられる特徴的な形に摩耗した石器も出土しており、貝殻が多く打ち上げられる沿岸に近いこの地で貝輪の加工が行われ、流通していたと考えられます。その他、土製や骨製の腕輪、腰飾り、シカの骨または角、クジラの骨製のかんざしなど27点の骨製品も発見されています。

その他の出土品

土器、土偶や耳飾りなどの土製品、石板、勾玉や管玉、石剣などの石製品、刺突具などの骨角製品、シカ、イノシシ、クジラなどの獣骨、魚骨、クリ、クルミ、トチなどの炭化した木の実などが発見されています。

周辺の伝説

柏子所貝塚の周辺には、縄文時代から平安時代までの複合遺跡である杉沢台遺跡も存在し、有史以前からこの地域が継続的に利用されていたことがうかがえます。

田村麻呂伝説

柏子所の集落には、田村麻呂に関する伝説が残っています。伝説によれば、田村麻呂は軍船を率いて柏子所に陣地を構え、大川通り（現在の大内田集落）に城柵の赤城を築いて反乱を起こした酋長の覚を攻撃しようとしました。田村麻呂は柏子所の山上の沼（端沼）の龍神に祈り、大雨を降らせて洪水を起こし、赤城を落城させて覚を降伏させたと伝えられています。

梅の御所と蝦夷の墓

柏子所には、蝦夷の首塚とも呼ばれる「梅の御所」があります。寛政9年（1797年）に肝煎半九郎という人物が夢のお告げによって蝦夷の骨を掘り出したとされ、俗に田村将軍遺跡とも呼ばれています。また、享保年間には、仙台藩の農民が巨大な人骨を発見し、国学者の人見蕉雨は、この人骨を蝦夷人のものだと推測しました。

柏子所貝塚は、出土品や伝説を通じて、縄文時代の人々の生活や文化、そして古代の蝦夷との関わりを垣間見ることができる貴重な遺跡です。

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