柔らかい肌

『柔らかい肌』（原題: La Peau douce）は、フランスの巨匠フランソワ・トリュフォー監督による1964年の長編映画であり、第17回カンヌ国際映画祭に出品されました。

ストーリー

著名な評論家であるピエール・ラシュネーは、バルザックに関する評論も手掛けています。彼は講演旅行でリスボンへ向かう途中、美しいスチュワーデスのニコル・ショメットと出会います。互いに惹かれ合った2人は、リスボンのホテルで関係を持ち、ピエールのスリリングな二重生活が始まります。長年連れ添った妻フランカがいるにも関わらず、ピエールとニコルの恋は次第に深まっていきます。

映画の背景

「ラシュネー」という名前は、トリュフォーの親友であるロベール・ラシュネーに由来しています。トリュフォー自身も、ペンネームにこの姓を使用したことがあります。
映画のロケは、パリ＝オルリー空港、ランス、リスボンなどで行われました。
ランスの映画館で上映されているアンドレ・ジッドの映画は、ジッドの元愛人であるマルク・アレグレ監督のドキュメンタリー『アンドレ・ジッドとともに』です。また、映画館にはマルセル・オフュルス監督の『バナナの皮』とジャン・コクトー監督の『オルフェの遺言』のポスターが貼られています。
予算を節約するため、講演会の客席のカットは『二十歳の恋』での音楽会の客席のカットを流用しています。そのため、客席にはジャン＝ピエール・レオの姿が見られます。彼は当時、助監督として撮影現場で働いていました。
ニコルがリスボンのホテルで泊まる部屋の番号は813です。この数字は、モーリス・ルブランのアルセーヌ・ルパンシリーズの一作『813』にちなんだもので、以後のトリュフォー映画にも頻繁に登場します。
ピエールとニコルが泊まる宿の名前「ラ・コリニエール」は、ジャン・ルノワール監督の『ゲームの規則』の舞台となる館の名前と同じです。
フランカにナンパされて罵られる男は、共同シナリオライターのジャン＝ルイ・リシャールです。
第17回カンヌ国際映画祭では、本作は必ずしも高い評価を得られませんでした。

『柔らかい肌』は、一見すると不倫を描いたメロドラマですが、トリュフォーは人間の心の機微を繊細に描き出し、登場人物たちの葛藤や苦悩を深く掘り下げています。映像美や音楽、そして俳優たちの演技が一体となり、観る者の心に深く残る作品となっています。

もう一度検索