柯文哲

柯文哲（か ぶんてつ）について

柯文哲（Ko Wen-je）は、1959年8月6日に台湾の新竹市で生まれた外科医、政治家です。台湾民衆党の初代党首であり、台北市長を二期務めました。彼は、その率直な物言いと既成政治への批判から、若者を中心にカリスマ的な人気を集めましたが、後に汚職疑惑で逮捕されるなど、波乱に満ちた人物です。

医師としての経歴

柯文哲は、国立台湾大学医学部附属病院（台大医院）の医師として、外科、緊急救命、臓器移植、体外式膜型人工肺（ECMO）、人工臓器などの分野で活躍しました。特にECMOを台湾に初めて導入した第一人者として、国内の集中治療の発展に大きく貢献しました。また、台湾大学医学部の教授も務めました。

1993年には、ミネソタ大学ツインシティー校医学部外科に1年間研修に行き、人工肝臓の研究を行いました。帰国後は、台大医院で創傷医学部門の主任を務める傍ら、臓器移植チームを設立し、台湾における臓器移植手順の確立に尽力しました。

2002年には、台湾大学医学部で臨床医学博士号を取得しています。

2010年には、政治家の連勝文が選挙演説中に銃撃された際、台大医院に搬送された連勝文の手術を指揮しました。

政治家としての経歴

2014年、柯文哲は無所属で台北市長選挙に出馬し、当選を果たしました。選挙戦では、既成政党の政治とカネの問題を厳しく批判し、若者からの支持を集めました。

2019年には、中道政党である台湾民衆党を設立し、初代党首に就任しました。同党は、従来の二大政党である民進党と国民党に代わる新たな選択肢として、支持を広げました。

台北市長時代

台北市長としての柯文哲は、交通政策や都市開発、環境問題など、様々な分野で改革を進めました。交通政策では、IC交通カードの全国化や、公共交通機関の利用促進に取り組みました。また、2017年には夏季ユニバーシアードを成功させ、その手腕を国内外に示しました。

一方で、対中政策では、中国との関係を重視する姿勢を示しました。中国政府が提唱する「両岸一家親」（中台は一つの家族）という考えに賛同し、中国共産党の革命聖地を訪問するなど、物議を醸す行動もみられました。

また、アメリカの人権活動家からは、中国での臓器売買に加担した疑惑を指摘され、論争を呼びました。

2024年の総統選挙では、台湾民衆党の公認候補として立候補しましたが、得票率26.46％で3位に終わりました。

汚職疑惑と逮捕

2024年、柯文哲は政治献金の虚偽記載疑惑と汚職疑惑により逮捕されました。選挙集会運営を請け負った業者への報酬が一部支払われていないことや、台北市内の商業施設整備を巡る汚職事件に関与した疑いが持たれたのです。彼は一時的に釈放されましたが、後に再び逮捕、収監されました。検察は、彼を贈収賄や政治献金横領の罪で起訴し、懲役28年6ヶ月を求刑しました。この事件は、彼の政治家としてのキャリアに大きな打撃を与え、支持率を大幅に低下させました。

家族

柯文哲の妻は医師の陳佩琪であり、3人の子供がいます。長男はアスペルガー症候群を患っており、長女との関係は悪化していると伝えられています。また、柯文哲は、独裁時代に家族が国民党政権に殺害・弾圧された過去を持つことから、二・二八事件の式典に遺族代表として参加し、馬英九総統との握手を拒否したこともあります。

その他

柯文哲は、その独特なキャラクターと率直な物言いから、多くの逸話を持っています。例えば、台北市議会での質疑で、感情的に机を叩く姿が話題になったり、市議から「一生牽制する」と宣言されたりしました。また、自転車愛好家としても知られ、台湾各地を自転車で走破するイベントにも参加しています。

サブカルチャーにも理解を示し、アニメイトを訪問したり、自らをキャラクター化したゲームを制作したりしました。コスプレ姿も度々披露しており、その姿はメディアでも取り上げられました。また、「垃圾不分藍緑（ゴミに青や緑の区別はない）」という言葉は、彼の名言として広く知られています。

しかし、失言も多く、「日本人は騙されてここに来る」などの発言が物議を醸しました。これらの発言は、彼の政治家としての評価を損なう要因にもなりました。

まとめ

柯文哲は、医師として優れた業績をあげ、政治家としては既存の政治体制に挑戦し、若者から絶大な人気を集めました。しかし、その言動は度々物議を醸し、汚職疑惑によって逮捕されるなど、そのキャリアは波乱に満ちています。彼の今後の動向は、台湾の政治情勢に大きな影響を与えると考えられます。

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