人工臓器

人工臓器とは

人工臓器とは、病気や事故によって機能を失った臓器の代わりとなるように人工的に作られた装置や材料の総称です。日本人工臓器学会では、「病んだ臓器の代行を目的として開発されたもの」と定義されています。

概要

人工臓器は、失われた臓器の機能を代替し、患者のQOL（生活の質）を向上させることを目的としています。その開発には、材料工学や電子工学といった機械技術だけでなく、組織工学といった再生医療の技術も用いられています。

例えば、機械技術を用いた人工臓器としては、人工心臓や心臓ペースメーカーが挙げられます。一方、組織工学を用いた人工臓器としては、培養皮膚や人工血管などが挙げられます。

人工臓器と混同されやすいものとして、人工透析装置などの医療機器があります。これらの機器は、臓器の機能を一時的に代替するものであり、体内に埋め込むことを前提としていないため、人工臓器とは区別されます。

歴史

人工臓器の歴史は古く、四肢を補綴する器具は紀元前から存在していました。古代エジプトでは木製の爪先が作られ、古代ギリシャでは木製の義足が用いられていました。

しかし、現代のような体内に埋め込むタイプの人工臓器が登場したのは、第二次世界大戦後のことです。当初は異物反応が問題となりましたが、材料工学の進歩により、生体適合性の高い材料が開発され、人工臓器の長期使用が可能になりました。

例えば、初期の人工骨は金属製でしたが、現在ではリン酸カルシウムなどの骨に近い素材が用いられるようになり、生体組織との結合が促進されています。

種類

人工臓器には、様々な種類があります。

義手、義足
義歯
義眼、義耳、義鼻
人工舌
人工乳房
人工食道
人工括約筋
補助人工心臓
人工心肺
人工心筋
人工心臓弁
心臓ペースメーカー
脳ペースメーカー
人工硬膜
デンタルインプラント
人工膵臓
人工骨
人工関節
人工内耳
人工視覚装置（人工網膜）
人工神経
人工血管
人工皮膚
眼内レンズ
オルガノイド
臓器プリンティング
* Organ-on-a-chip（生体機能チップ）

近年では、機械とコンピュータ技術を組み合わせた人工肢や人工腕の開発も進んでいます。これらの人工肢は、運動神経からの電気信号を感知して動かすことができ、より自然な動きを実現しています。

さらに、脳神経機能を直接制御する試みも行われています。例えば、東北大学では、ペルティエ素子を用いた脳神経機能制御装置の開発を進めており、てんかんなどの治療への応用が期待されています。

組織工学に基づく人工臓器

組織工学とは、生きた細胞を用いて人工的に組織や臓器を再生する技術です。この技術を用いて、皮膚、血管、骨、気管、食道、膣、軟骨などの組織が再生されています。

iPS細胞を使った臓器作製も研究されており、世界中の研究機関がしのぎを削っています。また、細胞をカプセルに入れて移植する治療法も開発されており、糖尿病治療への応用が期待されています。

社会的背景

現代医療において、臓器移植は重要な役割を果たしていますが、ドナー不足や免疫拒絶反応といった課題があります。人工臓器は、これらの課題を解決する手段として期待されています。

人工臓器の開発は、QOLの向上に大きく貢献するだけでなく、医療費の削減にもつながる可能性があります。今後、さらに高性能で安全な人工臓器が開発されることが期待されます。

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