柳井等

柳井 等（やない ひとし）の生涯

柳井等（やない ひとし、1919年7月28日 - 1999年2月6日）は、日本の実業家であり、ファーストリテイリングの前身である小郡商事の創設者です。父は牛馬商を営む柳井周吉で、等は11人兄弟姉妹の8男として山口県吉敷郡陶村に生まれました。貧しい家庭で育った等は、高等小学校を卒業すると進学を諦め、京都で兄の経営する飲食業を頼りに洋服屋の丁稚奉公を始めました。

徴兵され、中国での8年間を経て故郷小郡に戻った等は、兄と共に生活しながら4番目の兄から繊維・洋服部門を継承しました。1949年には、「メンズショップ小郡商事」を宇部にオープンし、1963年には資本金600万円をもって「小郡商事株式会社」を設立。さらに業務を拡大し、喫茶店や建設業にも進出しました。特に炭鉱が衰退していた時期には、労働者に職を提供するなど地域に貢献しました。

1984年、柳井は脳溢血で倒れ、その後1999年に79歳で亡くなりました。息子の柳井正は弔辞で「父は私の人生最大のライバルでした」と言及し、父の影響の大きさを表しています。亡くなった時の遺産は定期預金の残高だけで6億円に達しました。

人柄と人脈

柳井は学業が優れていたため、町から進学を提案される場面もありましたが、兄からの忠告で進学を断念しました。この決断の結果、学歴は持たなかったものの、ビジネスに期待をかけた息子の柳井正に大きな影響を与えました。宇部興産の社長、中安閑一との交流があり、彼のことを「裏の重役」と称する人もいたほどです。人望の厚い等は、政治家や企業のトップと良好な関係を築き、「街の顔役」として知られました。

息子の正は「父は気性が激しく厳しい人だった」と振り返り、できるだけ避けるようにしていたことがあります。また、暴力団組織の一松組とも関係を持ち、そこでの役員としても活躍しました。成功した商業事業を持ちながらも、極道上がりの若者たちが新たに事業を立ち上げる手助けをしたこともありました。

小郡商事の歴史

小郡商事には、兄の政雄が1946年に創業した「小郡商事」と、等が後の1949年にスタートさせた「メンズショップ小郡商事」が存在します。兄の会社は家電や日用品を扱っていたものの、等が復員後には繊維や衣料品の部門を担うようになりました。1950年代には、堅実な経営のもと、年商1億円に到達し、地元の有力企業として名を馳せました。

家族と親族

柳井の家族には、実業家である長男・正や、実業家・政治家として活動した兄の政雄、さらには部落解放運動に携わった親族が多数います。柳井等は、広い人脈を活かし、地域社会に貢献しただけでなく、家族にも影響を与える存在でした。その後、彼の築いた事業は息子によって引き継がれ、ファーストリテイリングへと成長していきました。

彼の生涯を通じて残された影響は日本のビジネス界に深く根付いており、その遺産は今もなお評価されています。

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