柳河風俗詩

「柳河風俗詩」（やながわふうぞくし）は、作曲家・多田武彦が北原白秋の詩に曲をつけた合唱組曲です。この作品は、白秋の詩集『思ひ出』から選ばれた4つの詩をもとに構成されています。多田武彦にとって合唱作品における最初の作品であり、男声合唱版が1954年に作曲され、翌1955年に初演されました。その後、混声合唱版も編曲され、広く親しまれています。

作品の背景

作曲当時、多田武彦は大学を卒業したばかりで、音楽家としての道を歩むか悩んでいました。しかし、作曲の指導を受けていた清水脩から音楽を続けるように励まされ、習作としてこの作品を作曲しました。当時としては珍しい男声合唱のレパートリーとして、この作品はたちまち注目を集め、現在に至るまで多くの合唱団によって歌い継がれています。男声合唱版の初演は京都大学男声合唱団によって行われ、混声合唱版は1986年に混声合唱団京都木曜会によって初演されました。

構成

「柳河風俗詩」は全4楽章からなり、全編が無伴奏で歌われます。

1. 柳河：ホ短調（混声版はニ短調）。白秋の故郷である柳河の夕暮れの情景を、馭者の視点を通して歌い上げます。男声版は、1985年度のNHK全国学校音楽コンクール高等学校の部課題曲にも採用されました。
2. 紺屋のおろく：イ短調。美しい女性に対する若者たちの憧憬と反感が、交互に歌われます。
3. かきつばた：イ短調。寂れた城下町に住む花街の女性を、柳河の溝に咲くカキツバタに重ねて歌います。物悲しい情景が目に浮かぶようです。
4. 梅雨の晴れ間：ホ短調（混声版はニ短調）。柳河を訪れた旅役者の生活を、軽快なリズムで歌い上げ、組曲の終結へと導きます。

柳河風俗詩・第二

多田武彦は、この作品の他にも、『思ひ出』から6つの詩を選び、「柳河風俗詩・第二」を作曲しています。この作品は、西南シャントゥールの委嘱により作曲され、1994年に初演されました。

構成

1. 水路：ニ短調。平成15年度全日本合唱コンクール課題曲にもなりました。
2. 梨：ハ短調。
3. 立秋：ヘ短調。
4. あひびき：ト短調。
5. 散歩：ト長調。
6. みなし児：ニ短調。

楽譜

これらの作品の楽譜は、音楽之友社から出版されています。

男声版：「多田武彦 男声合唱曲集（1）」(ISBN 9784276908130)
混声版：「多田武彦 混声合唱曲集（2）柳河風俗詩」(ISBN 9784276905719)
* 「第二」：「多田武彦 男声合唱曲集（6）」(ISBN 9784276909014)

関連事項

「柳河風俗詩」は、「日本の合唱作品100選」にも選ばれており、日本の合唱音楽史において重要な作品の一つとして評価されています。

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