柴谷宗叔
柴谷 宗叔 (しばたに そうしゅく) の概要
柴谷宗叔は、日本の宗教研究者であり、僧侶として活躍する人物です。トランスジェンダーである彼は、特に四国遍路に関する研究を行い、その実践を広めることで多様な価値観の理解を促進する活動に注力しています。また、性的少数者やLGBT向けの支援活動も積極的に行っており、地域社会に貢献しています。
生い立ちとキャリアの始まり
1954年、大阪府に生まれた柴谷は、3人兄弟の長男として成長しました。彼は小学生の時から自身の性に関する違和感を抱いており、特に「男らしさ」を強調する家庭環境において葛藤を抱えていました。大阪教育大学附属高校を卒業後、早稲田大学に進学し、そこでは女性服を購入したり、化粧を試みることで自己を受け入れる過程が始まりました。この頃に新宿のゲイバーで出会った仲間たちとの交流が、彼にとって大きな意義を持ちました。
卒業後は読売新聞社に入社し、経済部で新聞記者として勤務しましたが、スーツを着ることが自身にとって苦痛であり、仕事の合間に女装をしたりして息抜きをしていました。そこで彼は自身の悩みを隠し続けていましたが、94年に青岸渡寺を訪れたことが契機となり、自身の宗教的な道に目覚めることになります。
宗教活動への転身
1991年から四国八十八箇所霊場への巡礼を始めた柴谷は、その経験を通じて宗教的な実践に深く関わるようになります。1995年の阪神淡路大震災を経験した際、自宅が倒壊するも無事であったことをきっかけに、彼は自身の信仰が支えとなったと強く感じました。この出来事を経て、1998年から再び四国遍路に取り組むことになります。
2003年には、高野山大学大学院の社会人コースに入学し、2005年に早期退職して得度しました。彼は修士論文で四国遍路の現代の実態について研究し、2007年に修士課程を修了しました。彼の著作の一つである『公認先達が綴った遍路と巡礼の実践学』は、このテーマに基づいて執筆されています。
性同一性障害とその克服
高野山大学での学びを通じて、柴谷は自身の性同一性障害に向き合い、2010年には性別適合手術を受け、戸籍上の性別を男性から女性に変更しました。このような背景を持つ彼は、また高野山真言宗における権少僧正の地位を確立し、僧籍の性別変更が行われるという異例の事例を作りました。
LGBT活動と性善寺の設立
柴谷は、性的少数者やLGBTの権利を擁護するため、講演活動や相談会を実施しています。また、2018年には母親との関係性や介護に関する悩みをテーマにしたドキュメンタリーにも出演しました。彼は「性善寺」と名づけた寺を設立し、セクシャルマイノリティの相談所として機能させることを目指しています。
この寺は、LGBTの人々がパートナーと共に同じ墓に埋葬される権利を確保することや、希望する性別の戒名をあげることを支援する活動に取り組んでいます。最終的に2019年に「性善寺」としての改修が完了し、彼はその住職として地域の人々の心の支えとなっています。
主な著作
柴谷宗叔は、自身の経験を活かし、宗教の枠を超えた多様な視点からの理解の促進に寄与しています。
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