栃木青年師範学校

栃木青年師範学校（とちぎせいねんしはんがっこう）は、第二次世界大戦中の1944年（昭和19年）に誕生した官立の青年師範学校です。これは、かつて栃木県が設置・運営していた青年学校の教員養成機関を、国が引き継ぐ形で設立されたものです。

その源流はさらに古く、1922年（大正11年）3月に設立された栃木県立実業補習学校教員養成所に遡ります。同年5月23日には最初の授業が開始されました。その後、学校制度の変遷に合わせて名称も変更され、1930年（昭和5年）3月には栃木県立実業教員養成所となりました。この時期は修業年限2年で、隔年で学生を募集していました。1936年（昭和11年）3月には、青年学校の整備拡充に伴い、栃木県立青年学校教員養成所へと改称されます。翌1937年（昭和12年）からは毎年学生を受け入れるようになり、教育体制を強化しました。戦時色が濃くなる中、1938年（昭和13年）3月には男子臨時養成科が設けられましたが、これは1940年（昭和15年）に廃止されています。この1938年には、同窓会からの篤志により、河内郡平石村に生徒たちが実践的な農業を学ぶための実習農場が開設されました。

学びの場も移り変わりました。設立当初、養成所は県立宇都宮農学校内に置かれていましたが、その後、河内郡平石村峰にある宇都宮高等農林学校の敷地内に移転し、栃木県立実業教員養成所と名を改めました。そして、1941年（昭和16年）11月には、宇都宮高等農林学校の校内から、同窓会が寄贈した実習農場のある場所（現在の宇都宮市石井町2980番地付近）へと再び移転しています。この地が、1944年4月1日に官立学校として設立された栃木青年師範学校の新たな拠点となりました。

戦後混乱期の1946年（昭和21年）2月には、学生たちが集会を開き、当時の校長や教授陣の交代、そして軍国主義的な教育内容の刷新を強く要求するなど、学校のあり方に対する活発な動きも見られました。

戦後の教育改革、いわゆる学制改革の波の中で、栃木青年師範学校はその重要な役割を終えることになります。1949年（昭和24年）5月31日、新制宇都宮大学が発足しました。この時、栃木青年師範学校は、栃木師範学校と共に、新設された学芸学部（現在の教育学部）の設立母体の一つとして、宇都宮大学栃木青年師範学校として大学の一部に組み込まれました。そして、1951年（昭和26年）3月31日、宇都宮大学栃木青年師範学校はその歴史に正式に幕を下ろしました。

学校が使用していた土地は、その後の宇都宮大学の発展に引き継がれました。旧栃木青年師範学校の校地は、新制大学発足後、宇都宮大学農学部の附属石井農場として利用されました。しかし、1959年（昭和34年）には学生寮を統合・集約する計画が持ち上がり、石井農場は宇都宮大学峰キャンパス内にある中央農場へと移転することになりました。旧青師の校地には、新学生寮「志峰寮」が建設され、かつて栃木青年師範学校にあった「石井寮」をはじめ、旧宇都宮高等農林学校の「自律寮」や「姿川寮」、旧栃木師範学校男子寮の「啓明寮」などが順次、この志峰寮へと統合されていきました。1973年（昭和48年）には、女子寮である「清和寮」も志峰寮の第5寮として統合されています。しかし、1982年（昭和57年）には、寮生と大学当局との間で入退寮の権利や経費負担を巡る紛争が発生し、大学側は志峰寮への新規入寮を停止する措置を取りました。この状況を経て、1988年（昭和63年）に志峰寮は廃止されました。その後、志峰寮の建物の一部（第4棟）は改修され、新たな基準を満たす学生寮「第1寮」（男子寮）として生まれ変わりました。1990年（平成2年）には「第2寮」（女子寮）も発足し、現在も学生寮として機能しています。さらに、1989年（平成元年）には第1寮の西側に留学生のための「国際交流会館」が設置され、多くの留学生を受け入れています。このように、栃木青年師範学校がかつて学び舎を構えた土地は、時代の要請に応えながら、現在も宇都宮大学の重要な施設が集まる場所として活用され続けています。

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