栃木5億円強奪事件

栃木5億円強奪事件の真相：事件概要から裁判、その後の民事訴訟まで

2004年10月17日、栃木県南河内町（現下野市）の東武運輸栃木（現プリヴェ運輸）下野支店警備事業本部に、目出し帽を被った5人組の男たちが押し入り、現金約5億4250万円を強奪した「栃木5億円強奪事件」。

当時、日本の現金強奪事件としては被害額が最高であり、事件直後は連日報道されるなど、社会に大きな衝撃を与えました。

事件の概要

事件が発生したのは、2004年10月17日午後6時20分頃。物流会社である東武運輸栃木の下野支店警備事業本部に、5人組の男たちが押し入りました。

犯人グループは、終業直後の警備員2名にスタンガンや短銃のようなものを突きつけ、粘着テープで縛り上げ、金庫内に保管されていた現金入りバッグ20個前後を奪って逃走しました。

強奪された現金は、県内のパチンコ店や食品スーパーなどの売上金で、当初は約5億2400万円と報道されましたが、後に約5億4250万円に訂正されました。

しかし、犯行グループはパトカーのサイレンを聞き、現場近くの路上に約1億2000万円を放棄して逃走したため、実際に手にした額は約4億2250万円でした。

捜査の開始と難航

事件発生後、栃木県警は警視庁と合同で捜査本部を設置し、捜査を開始しました。犯行グループが従業員の少ない時間帯を狙って犯行に及んだことから、内部事情に詳しい者の関与も視野に捜査が進められました。

しかし、捜査は難航し、事件解決の糸口を見つけるまでに時間を要しました。

事件解決への糸口

事件発生から約21ヶ月後の2006年7月22日、実行犯である中国人の男が出頭。彼の自供から、事件の首謀者は山口組系の元暴力団員であり、複数の日本人と中国人による窃盗団が関与していたことが判明しました。

同年7月25日には、日本人3人と中国人1人が逮捕され、事件の全容が徐々に明らかになっていきました。

内部情報の漏洩

逮捕された日本人3人は情報収集役として動いており、そのうち1人は事件当時、東武運輸栃木の従業員として勤務していました。彼は、従業員の立場を利用して東武運輸栃木の内部情報を入手し、別の共犯者に共有。その情報が首謀者らに伝達され、事件が実行されたとされています。

首謀者の逮捕と否認

2006年7月31日、栃木県警は首謀者を強盗容疑で逮捕しました。しかし、首謀者は逮捕当時から一貫して容疑を否認。裁判でも起訴事実に関して全面的に争う姿勢を示しました。

裁判の経過と判決

情報収集役の裁判

情報収集役の日本人3人と共犯者1人の裁判では、2006年11月13日に宇都宮地裁で判決公判が開かれ、3人全員に実刑判決が言い渡されました。

実行犯の裁判

実行犯の中国人の裁判では、2007年1月17日に宇都宮地裁で懲役11年の判決が言い渡されました。判決では、彼の不法残留や強盗行為が厳しく非難されましたが、自首が成立したことが考慮され、減刑されました。

首謀者の裁判

首謀者の裁判では、2007年3月22日に宇都宮地裁で懲役18年、罰金300万円の判決が言い渡されました。裁判では、彼が直接的な実行行為を行っていなかったものの、共犯者を引き合わせ、暴力団の上位であることを利用して指示したことが認定されました。

首謀者は判決を不服として控訴しましたが、東京高裁、最高裁ともに棄却され、懲役18年、罰金300万円の判決が確定しました。

民事訴訟

2008年4月、東武運輸プリヴェ栃木支社は、服役中の首謀者の両親に対して、被害金の一部として2000万円の返還を求める民事訴訟を宇都宮地裁に提訴しました。

同年7月、宇都宮地裁は首謀者に対して、東武運輸プリヴェ栃木支社に被害金の一部として400万円の返還を命じる判決を言い渡しました。

事件の教訓

栃木5億円強奪事件は、企業の防犯体制の不備や内部情報の漏洩が、いかに重大な結果を招くかを如実に示しました。この事件を教訓に、企業はセキュリティ対策を強化し、従業員の教育を徹底する必要があるでしょう。

もう一度検索