栗林慧

栗林 慧: 日本の生物生態写真家

栗林慧（くりばやし さとし）は、1939年に満洲国の奉天市で生まれた、日本を代表する写真家の一人である。彼の生まれ故郷は現在の中国、瀋陽市であり、その後長崎県北松浦郡田平町（現在の平戸市）で育った。彼は東京綜合写真専門学校に進学したが、中退の道を選び、カメラの技術と表現の世界に飛び込んでいった。

専門分野と技術の革新

栗林は主に生物写真に焦点を当てており、特に昆虫などの小さな生き物を精緻に撮影する技術を持っている。彼は昆虫を大きく写し、その姿を観察者に新たな視点で提示する。通常のレンズでは捉えきれない細部まで映し出すことができる「虫の目レンズ」を開発し、背景を極端にぼかすことで、対象を際立たせる技術が評価を得ている。また、彼の撮影システムはスチル写真だけでなく、動画制作にも利用されており、特にNHKの各種番組でその力を発揮している。

さらに、栗林は花粉の飛散を1/50000秒で捉えることのできる撮影技術も実現し、科学的なアプローチと芸術的な視点を融合させた作品を多数発表している。これらの技術的挑戦により、彼の作品は日本のみならず海外でも評価され、多くの賞を受賞している。

経歴と受賞歴

彼のキャリアは1969年から始まり、自衛隊員や保険会社の社員などの職務を経て、フリーの生物生態写真家として独立する。この選択は来るべき彼の写真家としての活躍を決定づけた。1978年には日本写真協会新人賞を受賞し、その翌年には伊奈信男賞を受けるなど、初期からその才能を発揮していた。
また、1992年に栗林自然科学写真研究所を設立し、日本写真協会年度賞を受賞するなど、彼の活動はますます広がっていく。

2006年には科学写真における貢献が評価され、レナート・ニルソン賞を受賞。2008年にはその功績が認められ、紫綬褒章と平戸市名誉市民の称号も授与されている。彼の作品は書籍としても発表されており、「栗林慧全仕事」という著作を含む多くの書籍が存在する。

メディアへの出演

栗林の映像作品はテレビ、映画、CMなど幅広いメディアに及ぶ。例えば、2006年にはBS-hiで「世界最大のカブトムシ ヘラクレスを追う」に出演し、その後2018年にはNHK総合テレビジョンで放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」で彼の仕事に焦点を当てた特集が放送された。また、映画「アリのままでいたい」（2015年）では撮影総監督を務め、その独自の視点が映像に色を添えている。CMにも出演しており、1982年のオリンパス光学OM2の広告などに登場している。

地元への貢献

地元の長崎県田平町には1992年に「たびら昆虫自然園」がオープンし、栗林はここでも定期的に撮影を行っている。彼は常に自身のルーツを大切にし、その活動を通じて生物の素晴らしさを広め続けている。

栗林慧は、彼の情熱と技術によって生物の美しさを伝える価値ある写真家として、今なお多くの人々に影響を与えている。

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