栢木寛照

栢木寛照：比叡山から善光寺へ、平和と慈悲を貫く僧侶

栢木寛照氏は1946年、滋賀県甲賀市に生まれました。複雑な人生の道を歩み、サラリーマンを経て、1968年に比叡山で出家。叡南覚照師に師事し、仏道に精進します。その後、天台宗の様々な寺院で住職を歴任し、宗務にも携わるなど、精力的に活動しました。

栢木氏の活動は、天台宗僧侶としての役割にとどまりません。国際交流にも積極的に関わり、北マリアナ連邦名誉市民・名誉大使にも任命されています。特に、太平洋戦争の激戦地であったサイパン島での慰霊活動は、40年以上にわたって私費を投じて継続されており、その献身的な姿勢は高く評価されています。これは、戦争の悲惨さを後世に伝え、世界平和への願いを込めた活動です。

政治の世界にも足を踏み入れ、1996年の衆議院議員総選挙に自由民主党公認で立候補しましたが、落選。その後も、人材育成や文化交流活動に尽力し、様々な講演会やトークショーを企画するなど、幅広い活動を展開しました。

2015年には、善光寺大勧進の副住職に就任。そして2022年には、貫主の重責を担うことになります。貫主就任の記者会見では、釈迦や最澄の教えを引用し、平和への強い意志を示しました。これは、長年の活動の中で培ってきた、平和への思いの表れと言えるでしょう。

栢木氏は、善光寺貫主として、歴史的にも重要な役割を担っています。2023年には、浅間山天明大噴火240年企画展示を視察し、80世住職・等順の民衆救済の精神に感銘を受けました。そして、等順以来240年ぶりに鎌原観音堂で法要を執り行い、善光寺と鎌原観音堂の更なる縁を深めることを誓いました。

2024年には、等順の命日にあたる3月25日、天明大噴火と雲仙普賢岳噴火の犠牲者を弔い、能登半島地震の犠牲者への供養と復興祈願を行いました。また、長野県北部地震の被災地である栄村を訪問し、法要を執り行うなど、被災者への支援活動を積極的に展開しています。

栢木氏の人間性も魅力的です。5人兄弟の末っ子で、既婚、1女あり。趣味は居合道で、四段の腕前です。毎年、灯籠流しを行うなど、伝統文化にも造詣が深いです。長女は声楽家の栢木佐和子氏、弟は株式会社蓮葉代表取締役会長で野洲市長の栢木進氏と、ご家族も活躍されています。

栢木氏の法縁も、天台宗における重要な位置を示しています。大椙覺宝師、叡南覺忍師、叡南覺誠師、叡南祖賢師、そして師匠である叡南覚照師など、多くの高僧とのつながりがあり、その指導の下で研鑽を積んできました。兄弟弟子にも、千日回峰行を満行した高僧が多数おり、仏教界における栢木氏の地位の高さが伺えます。

著述活動にも熱心で、子育てに関する著書を複数出版。また、テレビ番組にも多数出演し、その活動は多岐に渡ります。

栢木寛照氏は、僧侶としての活動、国際交流、政治活動、そして社会貢献活動と、様々な分野で活躍する稀有な存在です。その活動の根底には、平和への強い願いと、人々への深い慈悲心が流れています。比叡山での修行から始まり、善光寺貫主として現在も活動を続ける栢木氏の歩みは、現代社会に生きる私たちにとって、貴重な示唆を与えてくれるでしょう。

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