核兵器運搬手段

核兵器運搬手段

核兵器運搬手段とは、核兵器を目標地点まで安全かつ迅速に輸送するための技術体系を指します。核兵器が兵器として機能するためには、目標地点へ確実に運搬し、爆発させることが不可欠です。初期の核兵器は巨大で重量もあったため、運搬手段の確保自体が大きな課題でした。

歴史

初期の核兵器、例えばリトルボーイやファットマンは、非常に大型で重量がありました。1940年代前半には、ロケット技術もまだ発展途上であり、重量物を運搬する能力に限界がありました。そのため、核兵器の運搬手段は爆撃機に限定され、自由落下型の核爆弾として運用するしかありませんでした。

第二次世界大戦後も状況は大きく変わらず、1947年にアメリカ空軍が独立した後も、核兵器運搬手段は空軍の大型爆撃機が中心でした。長距離核爆撃機（戦略爆撃機）であるB-36が重視された一方、航空母艦や艦載機は相対的に軽視され、アメリカ海軍の反発を招きました。

しかし、アメリカ海軍も核兵器運搬手段の獲得に力を注ぎました。核爆弾を搭載したP-2哨戒機を空母からJATO（ジェット補助離陸装置）で発進させる実験的な運用も行われました。実用的な核兵器運搬手段として、1949年には重艦上攻撃機AJサヴェージが配備され、可能性が見え始めました。核弾頭の小型化が進むにつれて、1956年には重艦上攻撃機A-3が配備され、艦載機による戦略核兵器運搬手段を獲得しました。

アメリカ空軍では、B-36に続き、B-47やB-52といった爆撃機が実用化され、核兵器運搬手段としての爆撃機部隊は充実していきました。

1950年代後半になると、核兵器の小型軽量化とともに、弾道ミサイルの技術開発が進展しました。1959年には大陸間弾道ミサイル（ICBM）のアトラスが、1960年には潜水艦発射弾道ミサイル（SLBM）のポラリスが配備され、核兵器運搬手段としての航空機の重要性は低下しました。その結果、XB-70超音速爆撃機の開発は中止され、艦載攻撃機A-5は核攻撃任務から外されました。

技術開発が進むにつれて核弾頭は小型化し、各種ミサイルに搭載されるようになりました。戦略核兵器についても、一部の大型核爆弾を除き、ミサイルに搭載されることが一般的になりました。

戦略兵器制限交渉（SALT）などの国際的な軍縮交渉では、核兵器の弾頭数だけでなく、運搬手段についても制限事項が設けられています。

主な運搬手法

航空機

初期の核兵器は、爆撃機に搭載された核爆弾として運用されました。当初は、高高度から大型の核爆弾を投下する方式が一般的でした。核爆弾が小型化し、戦術機にも搭載できるようになると、投下機が爆発の影響を受けないように、爆心地から距離を置いて投下するトス爆撃法が開発されました。近年では、巡航ミサイルの発達により、爆撃機はミサイル母機としての役割を担うことが多くなっています。

ミサイル

弾道ミサイルは、現代の核兵器運搬手段の主力です。弾道ミサイル用の核弾頭には、小型化技術が不可欠であり、高度な技術を要します。弾道ミサイルは命中精度が低い傾向がありますが、迎撃されにくく、核兵器運搬手段として優れています。

核砲弾・戦術ロケット

大砲から発射する核砲弾や戦術ロケットも、核兵器の運搬手段として開発・配備されました。例えば、アメリカ軍は「デイビー・クロケット」という小型核兵器を配備していましたが、射程は数キロから数十キロ程度でした。

関連項目

* 核ミサイル

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